「発見」は誤りだったがそれでも引き下がらない

赤いゾーンがすべて同じ断層に見えるが、大量の水を含む破砕帯はどこにあるのかわからない。実際は岩石片や砂礫、水分を多量に含む破砕帯などさまざまな地層が含まれる。破砕帯のゾーンの可能性を示すのが断層であり、全体を赤い斜線としているが、当然、細長い管状の空洞ではなく、サイフォンのように真空状態にはならない。

川勝知事は、「地質縦断図」を見ただけで、静岡県と山梨県の断層のゾーンがまるで理科実験のサイフォンと同じような曲がった管のように映り、それぞれの断層が管の役割を果たすと考えたことになる。

渡邉氏によると、JR東海が提出した2023年2月20日付文書の「地質縦断図」では静岡、山梨両県の断層はつながっていなかった。

ところが、2022年4月の専門部会に提出したJR東海の資料を調べたところ、両県の断層がつながっていることを発見したのだという。

渡邉氏の説明を受けて、川勝知事は「(JR東海は)断層がつながっているのに、つながっていない図を作って事実をねじ曲げた。つまり断層はつながっている」などと述べた。

両県の断層がつながっているという渡邉氏の懸念に対して、JR東海はこれまでの山梨工区の調査ボーリングの結果を踏まえて、「静岡県内の地下水が大量に山梨県内に流入することは想定しがたい」と説明している。

ほぼ1カ月後の3月28日の会見で、川勝知事は、「サイフォンの原理は間違っていた」と誤りをようやく認めた。

それでも「静岡県の地下水が抜ける恐れがある」を繰り返して、「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」を取り下げることはなかった。

リニア問題を複雑化させ、混乱を招くことが役割

ことし2月5日、森副知事は会見で、いまから4年以上前の2019年9月30日に、JR東海に示した「引き続き対話を要する事項」、いわゆる47項目のリニア協議事項を採点した結果を発表した。

筆者撮影
47項目の採点結果を発表した森副知事(=静岡県庁)

47項目のうち、30項目は「未了」、つまり解決していないとして「今後もJR東海と『対話』を続けていかなければならない」などとしている。

県発表資料の「対話を要する事項」を見ると、「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」など最近の課題を47項目に入れてあるのだ。

これでは47項目とは言えない。今回の資料を作成したのが渡邉氏らである。つまり、リニア問題を複雑化させて、混乱を招くのが目的であり、これではリニア問題はいつまでたっても解決しない。それが渡邉氏らの役割なのだろう。

川勝知事は3月13日の会見で、「4月に水資源の県専門部会と生物多様性の専門部会を開催したい。そこで静岡県内の調査ボーリングの議論が出る」などと述べた。

4月に予定される県専門部会で、南アルプス担当部長の渡邉氏だけでなく、新布陣のリニア担当者が勢ぞろいする。

新ポストの南アルプス担当部長の役割も明らかになるだろう。

当日は、川勝知事に忠誠を誓い、反リニアを貫くことは決してやめない強い意思表示が発揮されることだけが、いまからでも、よく見える。

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