修復か、存続か…住民の意見は割れている

エクセルシオールは海側のAブロックとその裏のBブロックを合わせて合計100室。空き部屋は3室のみで、6割の世帯が常住している。傾きながらも、いかに海辺のマンションが人気かがうかがい知れる。

自らも傾きには慣れているというシェディッドさんだが、問題は低い不動産価格にあるのだという。

「このマンションはリフォームされていない物件で、25万レアル(約740万円)、リフォームされたもので40万レアル(約1200万円)は下りません。もしマンションが水平だったら現在の4、5割増の価格がついているでしょう」

エクセルシオールの住民からも、ヌンシオ・マルゾーニと同様に修復工事を望む声が上がっている。主な理由は不動産価格上昇を望むためだそうだ。

しかし住民の中には、1階エントランスと同じように、個別に部屋の床を水平に直した世帯が1割程度おり、こうした人たちが修復工事に反対しているという。

筆者撮影
230平米のペリン夫妻のお宅。海風が注ぐサントスはパンデミックを経てさらに人気だとか

50年後の日本のタワマンは大丈夫か

かつてサンパウロから移り住んだシェディッドさんは、ペリン夫妻と同様に不動産価格が上がろうとも引っ越す意思はないと夫妻と口をそろえる。

「サントスはサンパウロに比べると治安が良いうえに、大気汚染がありません。このマンションの眺めは素晴らしく、周りには生活に必要な施設が整っています。ブラジルは日本と違って地震がないですしね。やっかいなのはマンションが傾いていることだけなんですよ」

やはり傾きが問題であるということは認識しているようだ。

日本では全国各地でタワマンが増えている。ブラジルの築50年以上のタワマンとは比較にならないだろうが、実際に年月がたたなければわからないこともあるだろう。もし傾いてしまったとき、一体どうなるのだろうか。

筆者撮影
いまさらマンションの傾きを注視する市民はいない
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