――いちばん大変だったことは何でしょうか。

関係者との合意形成です。例えば千代田区の制度では「近隣の居住者、店舗、事業者、町会等から、設置についての了解が得られる」が助成要件の一つになっています。そのため最後の最後に、隣地の住民の方から賛成を得られず、関係者に謝罪しながら計画を白紙に戻したこともあります。中には旦那さんがよくても、奥さんがダメ、というケースもありました。

ゴリ押しで設置することはしない

ご自宅へ説明に伺っても玄関まで。手土産を受け取ってもらえないこともしばしばあります。話は聞いて下さるし、とても常識的な方でも、「煙草が嫌だ」というお気持ちは、簡単に変えられません。

多くの人が賛成しているのだからと、ゴリ押しで設置することもできます。しかし、今後トラブルに発展する恐れがありますし、社会のためになる事業にはなりません。会社のミッションとして「いろんなスキマから世の中を面白くする!」ことを掲げているのですから、一人でも首を縦に振らないのであれば、やるべきではないと思うのです。

撮影=プレジデントオンライン編集部
設置をゴリ押ししても意味がない。喫煙者にも、近隣住民にも喜んでもらうことが重要だと強調した

――設置場所を選ぶ際の基準はあるのでしょうか。

まずは、自販機が設置できる場所であることです。人が集積するエリアで、10坪程度の土地があれば設置可能です。通常の店舗であれば、人通りの多い路面店が選ばれますが、喫煙所は2階以上や地下、裏通りであってもマイナスになりません。

路上喫煙が問題になっているエリアも選定ポイントの一つです。道路で吸ったり、隠れて吸ったりする人たちに移動してもらえたら、タバコを吸わない人にとってもいいわけですから。

都内では喫煙できる場所が減って、喫煙者が吸える場所を探し回るケースが少なくありません。だから自分で見つけて来てくれるんです。広告を出さなくても1カ月ほどすれば大勢の方が集まる、ある意味すごいビジネスだと思います。