■CEOが選んだトップの条件とは
ここ2年の間、日本の大企業で社長・会長を務める方を対象に、グローバルに活躍できる経営者の要件についてインタビューをしました。38名の方にご協力いただきましたが、その結果、「高潔さと品位を持って行動する」という項目を99%の方が選ばれました。
アメリカでも類似の調査を行ったところ、同じ結果が出てきました。英語でいうとインテグリティ(integrity)です。洋の東西を問わず、理想的には高潔さ、誠実さを備えていることが、グローバルに活躍できる人財の必須条件ということです。
人間の資質には「専門的資質」と「個人的資質」がありますが、インテグリティは後者であり、幼少時からの生育環境や教育など、企業に入る前の経験が基礎となります。会社に入ってからの育成の際に強化することもできますが、人としての生き方であり、簡単に身につく類のものではないと思います。
インテグリティのある人かどうかは、自分個人の利益を会社の利益に優先するかしないかでわかります。「自分が退任する羽目に陥るかもしれないが、合併を進めたら確実に会社全体のためになる。だから合併しよう」と決断できるかどうかです。そういう人は、その後に、次の道が開けています。
私は「外柔内剛」という言葉が好きです。固い信念を内に秘めつつ、外に対しては臨機応変に対応していく。インテグリティとはまさにその固い信念のひとつにほかなりません。
社内のマネジメントでも同じことがいえます。40代後半になると相当上のレベルの管理職になっているはずで、価値観の違う世代や、国籍の違うノン・ジャパニーズもうまくマネジメントしなければならない。
信念をもちつつ、外に対しては時にしたたかにたくましく、時に柔軟に対応していく必要があります。
※すべて雑誌掲載当時
東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。MITスローンスクールにてMBA取得。ベイン・アンド・カンパニー、デル、スターバックス等を経て現職。近著は『売れる「じぶん」を作る』。
G&S グローバルアドバイザーズ社長 橘・フクシマ・咲江(たちばな・ふくしま・さきえ)
清泉女子大学卒業後、国際基督教大学大学院修了。ハーバード大学大学院教育学修士。スタンフォード大学大学院経営学修士。ベイン・アンド・カンパニー等を経て、日本コーン・フェリー・インターナショナルに入社。2010年8月より現職。