マイナス金利解除のお膳立ては整いつつある

そして、その好循環の動きが、「今年の春闘で確実になると日銀が判断をするだろう」、というのが金融市場の見方だ。それが3月または4月の金融政策決定会合での、マイナス金利解除説の根拠となっている。

3月の金融政策決定会合が開催されるときには、ある程度の春闘の結果は出ている。足下では、今年の春闘の賃上げ率は、約30年ぶりに大幅となった2023年の数字を上回り、4%程度にまで上昇すると見込まれている。

しかも、2月下旬の国会答弁で植田和男日銀総裁は、賃金と物価の好循環の動きが強まっていると述べた。さらに、日本経済について、「デフレではなくインフレの状態にある」と言明している。間違いなく、従来の日銀コメントからは一歩踏み込んだ内容だ。着実に、マイナス金利解除のお膳立ては整いつつある。

写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

翌日物金利の日銀の誘導水準は0~0.1%が有力

マイナス金利が解除された場合、最重要ポイントは「無担保コール翌日物金利」がどのくらいの水準になるかだ。無担保コール翌日物金利は、「オーバーナイト金利」とも呼ばれ、金融機関だけが参加するインターバンク市場で取引される、1日満期の超短期の貸出金利のこと。

日銀は、この翌日物金利の誘導水準を決めており、現行のマイナス金利政策では「-0.1~0%」となっている。マイナス金利解除となれば引き上げられるが、現時点では、0.1%の利上げで誘導水準は「0~0.1%」になる、という見方が有力だ。その背景には、2月上旬に行われた内田眞一日銀副総裁の講演がある。

内田副総裁は、「マイナス金利の導入前は、無担保コールレートが0~0.1%の範囲で推移していた。仮にこの状態に戻すとすれば、0.1%の利上げになる」と、あたかも解除後を想定したかのようなコメントを発している。これを額面通り受け取れば、解除後の翌日物金利の誘導水準は0~0.1%になるだろう。