※本稿は、立川健悟『お金持ちは合理的』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
お金持ちは駅近が好き
お金持ちは、お金で直接買えないものにこそ価値があることを知っています。たとえば自宅から職場への通勤にかかる時間には、値札が付いているわけではないので直接買うことはできません。
しかし、たとえば現在の月給を労働時間で割って実質的な時給を計算すれば、通勤にどれくらいの費用がかかっているのか算出できます。あるいは、電車通勤なら定期代で、車通勤ならガソリン代などで、おおよその費用を計算することもできるでしょう。
通勤にかかっている時間は、決してタダではないのです。お金持ちは、こうした「時間コスト」にも敏感なのでしょう。通勤時間を最短にできる駅近物件を自宅として賃貸したり保有したりしている方が、かなりの割合を占めます。
もちろん、駅近の不動産となると家賃や価格もそれなりに大きなものになりますが、お金があるのでその点はほとんど気にしません。毎日、少しずつ積み重なる通勤時間を短縮することは、駅近物件に費やす金額よりも大きな価値があると判断しているのです。
ちなみに不動産オーナーや地主の方は、勤めに出ていないこともよくあります。しかしそれでも、日々の生活が便利で、病院やスーパー、よく使うお店、子どもの教育施設や行政関連施設などが集まっている駅前の栄えた場所に、徒歩数分でアクセスできる位置に自宅を構えているケースが多数派です。
意外にもタワマンは不人気
代々の地主のような伝統的なお金持ちは郊外の豪邸に住んでいることもたまにはありますが、ここ1、2代のうちにお金持ちになったような方の場合には、ほとんどが駅近に住んでいます。
また、セレブなイメージのあるタワーマンションに住んでいる方は意外にも少ない印象があります。
相続税の圧縮効果がいずれ使えなくなることを見越したうえで、ちょっと買い物に出るのにもエレベーターでの移動が必須となる上層階での暮らしは、必ずしも住みやすいものとは言えないのではないか、またその住みごこちに比べて価格が高すぎるのではないか、という判断をしている方が多いのかもしれません。
いわゆる普通の分譲マンションの、最上階でもない中層階の少し広めの間取りの部屋に、ひっそりと暮らしているお金持ちはとてもたくさんいます。
生活や通勤の時間コストを節約でき、郊外の豪邸に比べて気軽に友人も呼べ、高額なタワーマンションのようにコストパフォーマンスが悪化していない駅近物件。
お金持ちとは、こういう“お金だけでは買えない価値”を手にするためなら、そして、それが自分にとって納得いくものであれば、惜しみなくお金を出す人たちです。