叱り方、褒め方の下手な日本の管理職
企業の中核である課長職は会議でどのように叱られているのだろうか。30代課長で多いのは、能力や努力、行動が否定されるケースだ。そして、知識やスキルが否定されることは少ない。松下氏は「能力や努力よりも、知識・スキルが否定されたほうが救いがある」と話す。知識・スキルの欠如を指摘されることは、自分の改善すべき点の認識につながるからだ。しかし、「そんなことは無駄だ」「どうせできないのだから」と言われただけでは改善方法がわからず、叱られても効果はない。また50代課長になると、全人的に否定される割合が増える。意見を言っても無言で立ち去られたり、何を言っても根拠なく否定的な意見を述べられたりする、全人的否定は、叱り方として最悪だ。「どうでもいいじゃない、そんなこと」「あんまり意見を言うと嫌われるよ」「無駄な時間を使うなよ」といった言葉も、その人の意見を丸ごと否定するもので、叱り方として無意味だが、フリーアンサーではこの手の叱り方が多かった。会議でこのような叱り方をされることがあれば、参加者は積極的に発言するよりは、無難にその場をやりすごそうという集団心理に陥り、いくらファシリテーターが促したところで会議の活性化は難しい。
1000人調査では、営業会議が働き盛りのミドル層に意外に不人気だという結果も出た。これは営業会議が、よい点、悪い点を共有し、次の成果につなげていく、という本来の会議ではなく、目標の未達成者を吊るし上げる殺伐としたものになっているからだと考えられる。これも会議での叱り方が上手くない一つの例だ。また、会議で部下を強く叱る人ほど、どんな人間も怒れば奮起するはずだ、という勘違いをしばしば犯している。自分が叱責されて伸びるタイプでも、すべての人間が自分と同じではないことは認識しておくべきだろう。
一方、会議での褒められ方はどうだろう。年代にかかわらず顕著なのは、知識・スキルよりも、能力や努力・行動、といった点を褒められている点だ。能力や努力を褒めることはもちろん大切だ。一方で「よく勉強したよね。どういう本を読んだの?」と聞いたり、「ああ、なるほど。こういう形でシステムを組んだらいいんだな」と言ったりして、具体的な言葉で習得した知識やスキルを褒めることも重要なことだが、あまり行われていない。
日本の課長は、具体的に叱られたり褒められたりする機会が極めて少ないようだ。しかし、人は、具体的に叱られればそれを直すべく努力できるし、具体的に褒められればモチベーションはさらに上がる。会議の席においても、上司は部下の心の動きを把握しながら、より具体的に言葉をかけるよう努力するべきだろう。人格を否定するような叱り方はくれぐれもご法度だ。
会議を意義深いものにするためには、ファシリテーター、上司、部下、つまり参加者一人一人が、よりよい会議を行おうと心がけることが必要だ。積極的に、より具体的な発言をして、他人を尊重する気持ちを持つ。これが、心理的に心地よく効果的な会議をする秘訣ではないだろうか。
※【調査概要】「gooリサーチ」の協力により、インターネットを通じて、全国の20歳以上の正社員1046人より回答を得た。男女比は、87:13。調査期間は6月24~25日。