会議参加者が発言しにくい現実
会議が始まり1時間が経ち、気がつくと同じ人が延々と話し続けていた、という経験はないだろうか? もちろん参加者が、この事態を歓迎しているわけではない。実際、休憩時間になると参加者同士がウンザリした視線を交わす光景はよく見られる。
1000人調査アンケート(※)によると90%以上の人が「同じ人ばかりが話す状況」を苦々しく思っているのに、この不満は非常に改善されにくい。会議の参加者の間で最も不評なのは、会議の間、上司など特定の人ばかりが話し続けていることだ。アンケートでは、「発言したがっている」課長クラスの人がこの状況を快く思っていないことがわかったが、年齢、役職にかかわらず、この傾向は当てはまる。「特定の人ばかり話してしまう会議」にはどんな悪影響があるのだろうか。
1000人調査の分析者である松下信武氏は、「特定の人が話し続ける会議」の悪影響として、声の大きい人が得をする、ことを挙げる。会議は本来、声が大きいとか、話し好きである、といった個人の性質によって、発言の価値が規定されてはならない。無口だったり、おとなしかったりする人が優れたアイデアを持っていることも少なくないからだ。しかし、「特定の人しか話さない会議」では、本質とは関係ない個人の「おしゃべり」の特性によって、議論が左右されることがある。もちろん、意見の中身はともかく、会議で堂々と、そして延々と自論を展開できるのも、ビジネスパーソンとして有力な資質ではあろう。しかし、会議の結論が、声が大きいだけで中身の伴わない発言に左右されてしまう事態は避けるべきだ。そのためにも、会議のファシリテーターは、参加者全員に必要に応じて発言させる機会を割り振るべきだろう。
ただ、会議で発言しない人たちが、一様に、自己主張を嫌ったり、無口だったりするわけではない。彼らが会議で発言しない理由は「言うと損をする」雰囲気にある場合も多い。1000人調査でも65%の人が「本音が言えない」と回答している。発言すると非難されたり、あるいは責任を負わされたりすることがあれば、発言が自ずと少なくなるのも仕方がない。今回、アンケートでは「言われてやる気が低下した発言」と、逆に「やる気が増した発言」をフリーアンサーで募った。その結果を、課長職に絞り、年代別で集計、それぞれ「叱られ方」と「褒められ方」としてまとめたのが、次ページの表である。フリーアンサーとこの表からは、現在、日本の会議が抱える重大な問題が浮かび上がってくる。