まず、苦しみをもたらす希望と現実の開きには、埋められる(変えられる)ものと埋められない(変えられない)ものがあります。

たとえば、病気なら、良い治療法があれば治すことができるかもしれません。

あきらめず努力すれば、試験や仕事でいい結果を出せるかもしれません。副業を始めたり無駄な支出を減らしたりすれば、自由に使えるお金が増えるかもしれません。自分の言動を改めたり、周りの人との対話を重ねたりすれば、人間関係が改善されるかもしれません。

これらは、変えられる可能性のある現実、埋められる可能性のある開き、解決できる可能性のある苦しみだといえます。

もちろん、すべての問題が解決できるとはかぎりませんが、もし現実を変え、開きを埋めることができれば、苦しみが和らぎ、自分を肯定できるようになるかもしれません。

人には、絶対に解決できない苦しみがある

しかし、残念ながら、世の中にはどうしても変えられない現実、どうしても埋められない開き、どうしても解決できない苦しみもあります。

病気の中には、現代医学ではどうしても治せないものがあります。勉強や仕事の内容が自分に合っていなくて、どんなに頑張っても結果がついてこないこともあるでしょう。

他人を変えることはできませんし、あなたがどんなに歩み寄っても、対話が成立しない人と良好な人間関係を築くことはできません。過去に大きな過ちを犯したことがあり、ずっと後悔しているとしても、それをなかったことにはできません。

解決できない苦しみの最たるものは、老いや死でしょう。どれほど科学が進んでも、人は老いや死から完全に逃げ切ることはできません。こうした、解決できない苦しみを「解決したい」と思えば思うほど、人は解決できないことに苦しみます。

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人生における選択の大切さ

そして、私は、ニーバーの祈りを、人生における選択の大切さを訴えているものであるととらえ、次のように解釈できると思っています。

「解決できる苦しみと解決できない苦しみを見分ける賢い目を持ちましょう。そして、解決できない苦しみにいたずらに悩むのをやめ、勇気を持って、解決できる苦しみに力を注ぎましょう」

まずは、今抱えている悩みや苦しみをしっかり見つめ、その中から、解決できるものを選択し、ときには勇気を持って解決に取り組み、解決できないものは、静かに受け入れる。

それができたとき、人は自分自身を肯定し、心の平穏を手に入れ、幸せを感じられるようになります。また、解決できない苦しみについても、一度受け入れることで見え方が変わり、苦しみを和らげる方法が見つかるかもしれません。