交通手段が閉ざされれば、当然児童・生徒の登下校にも深刻な影響を及ぼすわけで、両者は不可分のものなのだが、問題は、学校の統廃合を決定する機関が教育委員会なのに対し、交通機関の存続を決定するのは民間企業、あるいは自治体の都市政策に関する部署で、両者が必ずしも連携が取れているわけではないという点にある。
交通機関の縮小を充分に考慮せず学校の統廃合が進められたり、あるいは地域に児童や生徒がまだ残っていたとしても、バス路線が維持できなくなっているところがある。状況は数年単位で目まぐるしく変化している。
その一方で住宅や住宅地というものは、高額商品であることもあって、一度完成したら数十年単位で利用されるものなので、地域社会の急速な変化に、不動産市場が追い付いていない。住宅地が地域社会から取り残され「限界化」してしまう理由はこの点にもある。
学校の有無は、現在、多くの地方都市において、その土地の資産性や流動性を左右する最も重要なファクターになっている。そもそも地方の小都市の道路事情は、都市部のように徒歩での移動を前提にしていないことが多く、子供が徒歩で登下校するには危険な道路が少なくない。
横断歩道も少なく、歩道もない。自治体によっては登下校のためのスクールバスを運行しているところもあるが、それはあくまで登下校のためのもので、子供が自力で移動するための公共交通網はすでに失われている。
加えて、あまりに学校から遠く通学が不便なエリアでは、子育て世代は好んで住みたがらないので、仮にそこがどんなに物件価格や賃料が安めであったとしても、近所に友人もいなければ、下校後に遊びに行くための交通手段もない。おまけに学習塾に通うのも容易ではないとなれば、親としては敬遠せざるを得なくなる。
僕が住む横芝光町でも、学校が遠いエリアにある古い分譲地は、もはや坪1万円以下でも売却が難しい状態が続いている一方で、比較的区画面積が広く、小学校まで徒歩で通えるエリアは、駅も商業施設も近くないにもかかわらず坪数万円以上の値段が付いている。安心・安全な子育てや通学のためには、10倍の価格差を受け入れてでも、学校の近くに住居を構えるほかないのだ。
電気・水道・ガスはどうなっているか
一方、各家庭に供給される生活インフラ、すなわち電気・水道・ガスといった諸設備については、少なくとも電気とガス(プロパンガス)については、一般の農村部と同様の供給が保たれており、現時点でその供給に大きな問題は発生していない。
問題は上下水道である。もともと千葉県の農村部は上下水道の普及率が低く、その農村部に散在する限界分譲地も、いまなお上水道すら届いていない所は珍しくない。上水道のない分譲地の住戸は、基本的に自宅の敷地内に各戸自前の井戸を掘って生活用水を確保しているが、数百区画に及ぶ中規模程度の住宅分譲地だと、その住宅団地の住戸のみに配水する、私設の水道設備(千葉県では主に集中井戸と呼ばれる)を構えていることもある。