当選確実と思っていたら超僅差に…投票率の落とし穴

繰り返しますが、お金や人脈がなくても、市民の共感を得て、市民を味方につけることができれば、選挙に勝てます。特定の団体にお金を配って票を集めても、市民の数の方が圧倒的に多いからです。

泉房穂『10代からの政治塾 子どもも大人も学べる「日本の未来」の作り方』(KADOKAWA)

でも実際の選挙は、もう少し複雑な数字のゲームです。ここでは少しだけ、選挙における投票数の話をしましょう。

例えば、有権者が100人いる村で、AさんとBさんという2人の候補者がいたとしましょう。Aさんは、100人のうちの30人にお金を配って、票を入れてもらうよう約束をしました。Bさんは演説をがんばって、残り70人の共感を得ました。これで選挙をすれば、30対70の票数で、Bさんが当選することになります。

ところが、現実はそう簡単にはいきません。そこに投票率という問題があるからです。投票権を持っているからといって、みんながみんな選挙に行くわけではありません。たとえいいなと思う候補者がいたとしても、用事があったり面倒くさいなと思ったりすれば、行かない人も出てくるわけです。

投票率はそのときどきによって違いますが、だいたい4〜5割程度と言われています。それを加味すると、100人中70人がBさんを応援していたとしても、実際に投票に行くのは4割ほど。70人の4割ですから、28票しか得られないことになります。

一方でAさんの方は、お金を配っているわけですから、最低でも9割の人はちゃんと投票してくれます。30人の9割は、27票。つまり、70人対30人というダブルスコア以上の差で支持者を集めても、実際の選挙の結果は、1票差で辛勝という接戦になる可能性が高いのです。ちなみに、私の市長選挙がまさにコレでした。市民の7割が私に賛同し、当選確実だと思っていたら、わずか69票差の勝利だったんです。人口30万人の選挙ですから、超微差。本当にギリギリで勝てたわけです。

7割の賛同が得られるかどうかがカギ

逆の言い方をすれば、選挙は、7割の市民の賛同を得られれば勝てるということです。私はこれを「7割の法則」と呼んでいます。仮に投票率がもっと高ければ、勝利はもっと確実なものになるでしょう。私はいろいろなところで、市民を味方につければ選挙に勝てると言い続けていますが、決して理想論ではありません。投票率も加味した「7割」というのが、当選のリアリティなんです。

この割合を多いと思うか少ないと思うかは君次第ですが、サイレント・マジョリティが何を求めているかを的確にとらえられれば、十分に可能な数字です。

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