赤字経営の国鉄が断行した値上げの連発

ブルートレインを中心とした国鉄の夜行列車が変化していく時代、国鉄の運営そのものも大きく変化していった。

実は国鉄の運営は1964(昭和39)年度に単年度収支で8300億円の赤字となった。当初は繰り越し利益でカバーしたが、1966(昭和41)年度決算で完全な赤字に転落してしまう。その状況を何とか改善すべくさまざまな合理化もはかっていたが、その一方で運賃や料金の値上げにより収支のバランスをとることも考えたのだ。

この状況下で最初に実施されたのは、明治の鉄道創業時より引き継がれてきた「等級制度」の廃止である。1969(昭和44)年5月10日から2等は「普通」、1等は「グリーン」と呼ばれるようになった。これは呼称の変更だけでなく、運賃(乗車券)・料金(特急・急行・座席指定・寝台などのサービスに対する対価)制度が抜本的に変化したのだ。

現在、グリーン車を利用する際、乗車券(運賃)にグリーン券(グリーン料金)を合わせて購入するスタイルだが、等級制度の時代は1等運賃、2等運賃と運賃そのものが等級別に設定されていた。等級制廃止で運賃が一元化され、グリーン席を利用する場合は、グリーン料金を加算する方式になったのである。

等級制度の廃止とグリーン料金の新設

また、寝台の呼び名も変わった。等級制度だった最末期、寝台は1等と2等に分かれ、1等は個室タイプがA室および個室、中央通路式のカーテンで仕切るタイプがB室、2等は客車寝台および電車寝台となっていた。等級制廃止で1等はA寝台、2等はB寝台となった。個室も引き続き使用され、これはA寝台1人用個室などとなる。

24系開放式A寝台の車内(寝台急行「銀河」車内にて。2008年2月9日撮影)(写真=Nkensei/CC-BY-SA-3.0-migrated-with-disclaimers/Wikimedia Commons

ちなみに寝台料金は旧等級の運賃差額を見込んだ設定で、A寝台使用時に1等運賃差額の補塡に相当するグリーン券を買う必要はない。言葉にすると複雑に思えるが、扱いはシンプルになったのである。

この等級制度廃止時に合わせて運賃・料金の改定も行われ、初乗り運賃は2等20円から普通車・グリーン車利用ともに均一30円になった。また、寝台料金も改定され、客車3段式の場合、上段800円、中段900円、下段1000円と各段別で設定されていた価格が上・中段はともに1100円、下段は1200円となった。