ブルトレの必要性は国会でも議題に

同年6月5日の「参議院運輸委員会」議事録を見ると、夜行列車問題の口火を切ったのは漫才グループ「漫画トリオ」の横山ノックこと山田勇氏だった。

「夜行列車の効率が悪いということでその縮小、廃止が国鉄再建の一環としまして取り上げられておりますが、具体的にはどう取り組んでいくんでしょうか。効率の悪い列車をある程度削減するのもやむを得ないかもしれませんが、ブルートレインなどといいまして、愛称で非常に親しまれておる夜行列車もございます」

松本典久『夜行列車盛衰史』(平凡社新書)
松本典久『夜行列車盛衰史』(平凡社新書)

これに対して第一次大平内閣の運輸大臣を務めていた森山欽司氏は「東京―西鹿児島でございましたか、直通特急列車があるが、そういう汽車は本当に必要なのかと。(中略)せっかく新幹線ができたわけでございますから、朝早く乗っていただいてそして博多から鹿児島までの特急列車をつくれば同じ目的を達成するのではないかと」と答弁している。

森山氏は1975(昭和50)年3月に全通した山陽新幹線の活用で代用できるとしたのだ。実はこのダイヤ改正に合わせて博多〜西鹿児島間の特急「有明」は3往復から10往復に大増発されており、そのうちの半分は東京発の「ひかり」でも乗り継げた。今さら勉強不足を指摘する必要はないが、交通路としては完成していたのである。

「ブルトレブーム」の陰で国鉄は赤字に苦しんでいた

この委員会には国鉄当事者も出席しており、国鉄総裁に就任して間もない高木文雄氏は、昨1978年10月改正で関西〜九州間のブルートレイン3往復などを廃止、様子を見ているとしたうえで、「夜行列車をうまく使って宿泊費その他が少なくて済むということで、会議等にお集まりになるのについて夜行列車を絶えず使っていらっしゃる方もございます(中略)需要に合った形で減らしていきたい」としている。

高木氏はブルートレインの価値を評価したうえで、国鉄全体の再建をめざしていたと思われる。実際、ブルートレインを削減したところで国鉄全体としてみれば大した合理化にはならなかったと思われる。それよりも全国一律だった国鉄運賃を輸送密度によって幹線と地方交通線に区分、それぞれに見合った価格に設定する方が得策としていた。これは高木氏の国鉄総裁退任後に実現することになる。

「ブルートレイン・ブーム」が巻き起こっていた時代、ブルートレインを取り巻く環境とそれを運営する国鉄は厳しい状態に追い込まれていたのである。

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