夜行列車のライバル「夜行バス」
さらに1980年代に入ると高速夜行バスも増えてくる。
日本の高速自動車道は、1965(昭和40)年に名神高速道路が全通、1969(昭和44)年に東名高速道路が全通と、鉄道整備に比べてやや遅れをとっていたが、その後、全国各地で急速に建設が進み、1982(昭和57)年には中央自動車道、1983(昭和58)年には中国自動車道、1985(昭和60)年には関越自動車道も全通、さらに東北・北陸・九州など主幹路線が次々と建設されていった。
こうした高速自動車道の整備に合わせて高速バスや高速夜行バスの路線が続々と誕生していったのである。
その運賃はおおむね国鉄の運賃と同じレベル。しかも所要時間は国鉄の普通列車を上回るケースも多く、強力なライバルとなったのである。さらにブルートレインで比べてみると特急料金と寝台料金が加算される。単純に価格だけで比較すると高速夜行バスに大きく水をあけられることになった。
国鉄に追い打ちをかけた「空路」の台頭
また、利用者の国鉄離れは、ブルートレインだけでなく、国鉄の稼ぎ頭となる新幹線やそれを基軸に在来幹線に広げられた昼行特急でも現れた。はるかに高額と思われていた空路との価格格差が縮まり、区間によってはほとんど差がない状態になってきた。
実はこの時代は地方空港の新設や整備も進められた。新たな空路が設定され、ジェット化も進み、その輸送力は拡張していく。結果としてシェアが国鉄から空路に移るのも当然の成り行きだった。
こうして国鉄の赤字は減るどころか増え続けていくことになる。
これは国にとって大きな問題となり、最終的に国鉄再建のための分割民営化に進むことになるが、それまで手をこまねいていたわけではない。例えば、赤字額の多い路線を「特定地方交通線」と定め、その廃止を進めた。そしてついに1979(昭和54)年には経費節減のため夜行旅客列車の廃止まで検討されている。