慰謝料では探偵費用もカバーできず
こうしてA子さんは、友人や探偵の話を信じて高額な金銭を得られると思い行動に出た結果、夫に出て行かれ、月4万円の生活費を受け取る生活になってしまいました。以前よりも生活が苦しくなりましたが、離婚をしても金銭的に得がないので、身動きが取れません。
弁護士に依頼して不倫相手に慰謝料を請求しましたが、相手は「貯蓄がないので50万円しか支払えない」と言ってきました。
裁判になった場合の弁護士費用や手間を考え、やむなくその金額で合意しましたが、高額な探偵費用を払ってもらうことはできず、大きなマイナスを抱えてしまいました。
多額の慰謝料は「超レアケース」
皆さんはA子さんのエピソードを読んでどう思ったでしょうか。浅はかだ、こんな人がいるはずがないと思うかもしれません。あるいは、不倫した方の“やり得”だと思うかもしれません。
しかし、これが現実的な数字なのです。
最近はインターネットにも、数字の面で正確な情報は出回っていますが、不倫をされたら「相手が悪い、慰謝料をたくさんもらえる」としか考えられなくなり、正確な情報もアドバイスも頭に入ってこなくなった結果、その後の見通しを誤ってしまう人は非常に多いのです。
その大きな原因は、「不倫をしたら多額の慰謝料を払うものだ」というイメージが世間に浸透していることです。
事例の中にも出てきた通り、一般的には不倫の慰謝料の相場は100万~200万円程度です。しかも、昔に比べて金額は低くなる傾向にあります。
これは裁判になって判決で得られる金額なので、任意にこれ以上の金額が支払われるケースはもちろんあります。もっとも、それは不倫をした側にそれだけの金額を払う理由がある場合に限られ、かなりのレアケースです。もちろん相応の収入や貯金も必要です。
それなのに、インターネット上には、不倫で高額の慰謝料をもらったという体験談がたくさん存在しています。芸能人が不倫をしたというネットニュースには、「奥さんは慰謝料をがっぽりもらって離婚ですね」といったコメントが並びます。
芸能人が実際に支払った慰謝料の額が表に出ることはありませんし、私自身が取り扱ったケースでも、芸能人だからといって多額の慰謝料が支払われた事例は見たことがありません。
芸能人の不倫報道の際には、「離婚にあたって多額の慰謝料を支払った」「自宅やマンションを渡した」と書かれることが多いですが、その全てに明確な根拠があるわけではなく、噂をもとに書いたり、メディアの慣例として半ば定型文のように書かれたりしている可能性もあります。