「男たちとは関わりたくない」と話す女性
さて、寄稿文の中心内容は、男性において女性が、女性において男性が、敵対勢力、さらには敵対感情すら超えた「絶対に関わりたくない対象」になっており、女(男)は男(女)が何を考えているのかまったく気にもしなくなった、というものです。
サッスマン氏が自らインタビューした韓国のある女性は、どんなタイプが好きだとか、または嫌いだとか、そんな内容ではなく、ただただ男たちと何もしたくない、関わりたくないという趣旨の話をしました。サッスマン氏は、この断層、本書で「分断」としているこの現象こそが、韓国の低い出生率の始発点だとします。
本書もそうですがサッスマン氏もまた、これ“だけ”が原因だと安易な主張をしているわけではありません。韓国にも養育費用など育児に関する他国でも問題とされる多くの問題点があるし、特に住居問題などが結婚と出産において大きな障害物であると認めています。
しかし、それよりももっと「基本的な力学関係」が働いている、と。その基本的な関係こそが、女性と男性の間の嫌悪、韓国メディアの言う「ジェンダー戦争」であり、多くのメディアはこの点を見落としている、軽く見過ぎている、と。
「非・恋愛」「非・性関係」「非・婚」「非・出産」
韓国の女性たちは、もともと儒教思想の影響を強く受けた韓国社会で、家父長的な考えに支配され、「我慢すること」を美徳のように教えられてきました。しかし、教育水準が高くなり、女性の社会進出が広がったこと、さらにこれまでの価値観が他国より女性に不利なものだっただけに、余計に強い反感、いわば補償心理を抱き、相応の権利を求めるようになりました。
彼女たちが不満を抱く現状の分かりやすい例として、男女賃金格差があります。韓国は、26年連続でOECD不動の1位(男女賃金格差最悪)です。
サッスマン氏は、韓国の女性たちは、肯定的な意味としてのフェミニズム、すなわち性差別をなくそうなどの主張に触れる一方で、同時に家父長制などの文化・社会的要因による差別被害を経験し、その間で混乱してしまったと指摘しています。
そして、その混乱の中で、急すぎる“覚醒”をして、韓国女性たちが取った道こそが、韓国で流行語のようになっている四つのB(「非」の韓国語読みは「ビ」です)だとします。「非・恋愛」「非・性関係」「非・婚」「非・出産」。すなわち積極的にシングル生活を選択するわけです。「怒り」をも超えた「分断」の正当防衛化が始まったのです。