運転手付きのマイカーを持っているようなもの
現在はベトナムでも自動車にクーラーが付いている。高級なホテルではなく一般の飲食店で食事をした後でも、スマホでタクシーを呼ぶと5分から10分ほどで店の前にタクシーが現れる。会計を済ませる前にタクシーを呼んでおいて、会計しながら待っていればよい。暑いベトナムでは、店の前までタクシーが来てくれるのは何よりのサービスである。これなら専用の運転手付きの自家用車を持っているようなものだ。
余談になるが、ベトナムではいつまで経ってもハノイやホーチミン市のモノレールや地下鉄が完成しない。それには役人の汚職が関係していると噂され、市民の怒りの対象になっていた。しかし、昨今、それを怒る人はめっきり減ったという。なぜなら、モノレールや地下鉄を利用する際には、駅まで歩いて行かなければならないし、駅を降りてからも目的地まで歩く必要があるからだ。暑いベトナムでは人々は炎天下を歩くのを嫌う。
そんなことから、店の前まで冷房の効いた車が来てくれて、料金も安いスマホ・タクシーが大変な人気である。もはやモノレールや地下鉄が完成しても利用する人は少ないのではないかとまで言われている。
人口密度の高いアジアでは車は「お荷物」
このスマホを利用した交通システムは、東南アジアの経済発展の行方も左右しそうだ。それは駐車場の問題とも関連する。東京がそうであるようにアジアの都市は人口密度が高い。
アジアの都市にはロサンゼルスのように巨大な田舎と表現される人口密度の低い都市はない。そんな都市では地価が高い。そのために中心部では駐車場が少ない。そんなわけで自家用車で移動しても駐車場の確保に苦労する。専用の運転手を雇っていなければ、中心部を自動車で移動することはできない。
しかし、グラブなどのシステムを用いれば駐車場の確保を心配することはない。これもウーバーやグラブなどが好まれる理由である。
ほぼ全ての家庭が自動車を保有し、自動車が富や地位の象徴ではなくなると、自動車の保有は苦痛である。普通の勤め人が自家用車を利用するのは休日だけである。それでも子供が小さい時はドライブなどに出かけるが、子供が大きくなればドライブにも行かなくなる。バッテリーが上がることを心配するようになる。わが家ではそのような状況がここ10年ほど続いている。