ワースト2位となった同一NFTスタジオによる「Mutant Ape Yacht Club(ミュータント・エイプ・ヨット・クラブ)」をはさみ、3位には日本アニメ風のデジタルイラスト「Azuki」の名が挙がる。ロサンゼルスのスタジオが制作した。コレクションのフロア価格は21.9ETHから4.2ETHに下がり、ドル換算の平均損失額は5万6351ドル(約800万円)となった。

優れた技術が投機で歪められた

NFTを取り巻く投機バブルが崩壊し、多くの投資家が大きな損失を被った。当初、NFTは画期的な技術として歓迎され、アーティストを支援し、デジタル所有権を認証する方法と考えられていた。しかし、市場は実用性よりも投機に重点を置いたため、劇的な下落につながった。

いまや市場には限られた人々だけが残り、少人数のあいだで同じNFTが行ったり来たりしている状況だ。2050ドル(約29万円)の損を被ったというサンフランシスコの32歳男性は、VICEの取材に、「これらのNFTプロジェクトの多くは、少数の人々によって所有され、同じ人々の間を行き来しているのが実情です」と語る。コミュニティには、内輪もめやヒステリックな感情も漂っているという。

NFTの暴落には、複数の要因が関連している。最も顕著な点として、過度な期待から適正価格を大幅に超える値付けが横行した末に、投機バブルがはじけた。また、NFTの売買には暗号通貨が用いられることが多い。ドルに対する暗号通貨の価値の減損も足を引っぱった。さらには、NFT市場に新しいアーティストやプロジェクトが続々と参入したことで、市場が飽和状態に。供給過多となり、多くのNFTの価値が下がった経緯がある。

写真=iStock.com/Vladimir Vladimirov
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最後に、法的な不確実さも大きな要因だ。NFTは匿名性から、マネーロンダリングに利用される懸念などがある。米証券取引委員会(SEC)は、一部NFTを連邦証券法に定める証券とみなし、無許可で扱った特定の取引業者に対する行政手続きに出ている。こうした事例はまだ一部だが、SECが暗号資産業界を潰しにかかったとの見方もあり、NFTの法的な立ち位置は先行き不透明だ。

NFT自体はひとつの優れた技術だ。未来あるアーティストの作品を適正価格で購入して支援したり、チャリティ目的で気軽に寄付をしてささやかなNFTを記念に受け取ったりと、活用の方法は本来無限大であった。だが、アルゴリズムで自動生成された1万点のサルのアートが巨額で取引されるなど、歪んだ用途が拡大したことで退廃を招いた。

NFTは苦労なくして儲ける手段だとの認識を改めない限り、本来の可能性を発揮することは難しいだろう。

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