日本人が薬漬けになる本当の理由

ではなぜ日本人は相変わらず「薬漬け」なのかといえば、医者の教育が悪いからです。

多くの医者が自分の専門以外の症状を訴える患者さんに対しては、標準治療の記された医者向けのマニュアル本を参考にして薬を処方していると思います。

マニュアル本では、各々の病気にこんな薬を出せばいいと3種類くらいの薬をすすめます。これでは5つくらいの検査の異常値がある人は15種類の薬を出されることになります。

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さらにつけ加えると、日本でいちばん売れているマニュアル本の『今日の治療指針』という本の編集代表は製薬会社ととても仲がよく、かつて血圧の薬の効果にまつわる大規模調査で改ざんをおこなったと認定されている東大教授です。

また、欧米ではあまり見られない日本の医療界の悪しき習慣として、薬の予防投与があります。

たとえばけがをした際に、まだ感染症が起こっていないのに抗生物質が出されます。

なるかならないかわからない症状に対して、飲まないほうがいいにこしたことはない薬をすすめるなんてめちゃくちゃな話だと思いませんか?

健康診断に関する標準値は厚労省の要請で学会幹部の医者が決めています。

ですから学会の研修会に参加している医者(この人たちは専門医とか認定医の資格をもらっています)は「標準値から外れた患者さんには薬を投与する」という洗脳を受けにいっているようなものです。

わたしも内科学会の認定医で、研修にいかないと資格をとりあげられてしまうというシステム上、参加しますが、いつも「メタボは恐ろしい。太っている人は危険です」といった話を滔々と聞かされ、しかも質問コーナーがないので「だったらどうして太っていても長生きできる人がいるのか?」と疑問を呈したくてもきくチャンスがありません。

誠実な医者ほど大学病院で出世できない理由

そもそも頭のかたい医者に限って、大学病院が教えることに疑いをもたない傾向にあって、患者さんの症状によってフレキシブルな対応をするということができないのです。

これこそが大学病院が医療を支配する時代の悪しき名残りだといえるかもしれません。

そもそも治療とは誰のためのものか? 当然のことながら、患者さんがよりよく生きるためのものです。

ところが大学病院の多くの医師にとっての最大の関心事は、臓器機能を示す数値。患者さんの暮らしぶりや、人生哲学などには興味がなく、ひたすら数値にこだわり続けます。

数値を下げるためにどういう治療が効果的なのか、一つでも多くのデータが欲しい、一つでも多くの成功例が欲しい。

大学病院の偉い先生は大学での実績を上げることで大学病院に貢献し、ひいては自分の評価を高めたい。

大学の偉い先生の下で働く医者は、手柄を立てて大学内部での肩書を引きあげてもらいたい。

もちろんそうでない真摯しんしな医者もいますが、そういう誠実な人はなかなか出世できません。

山崎豊子さんの『白い巨塔』という作品をご存知のかたなら、ご理解いただけるのではないでしょうか。

この当時は、腕のいい医者が教授でしたが、今は動物実験ばかりやってきた人が教授になるのでさらに性質が悪いといえます。