現実味がない養子縁組プラン
また、昨日まで一般国民だった人が婚姻という強い心情的な結合も介さずに、それまで保障されていた自由や権利を大幅に制約される皇族になるという決断をすることは、普通の生活感覚を持っている場合、至難だろう。
すでに「それは、特攻隊に志願するほどの大きな覚悟と勇気を必要とする」(新田均氏)とか、「(それを望む人は)いるわけがありません。……私がベストと思っているのは……(本人にまだ判断能力がない)赤子のうちに(養子)縁組を行うことです」(竹田恒泰氏)などといった発言がある。これらの発言からも困難さが伝わる。
また、現在の皇室の中にそのような養子縁組を望む宮家が存在するかも、見通せない。対象になるとすれば常陸宮家、三笠宮家、高円宮家だろう。しかし、それぞれの宮家の方々のご年齢やご家族の構成などを考えると、スムーズに受け入れられるとも想像しにくい。
もし、さまざまな障害がクリアされて、養子縁組が成立しても、そうした形での皇族身分の取得に対し、違和感を抱く国民もいるのではないだろうか。
特別な立法によって養子になった人は、本人の意思に関わりなく、スムーズに結婚して「男子」を恵まれることが強く(!)期待されるだろう。にもかかわらずその期待に応えられなかった場合、人々がどのような受け止め方をするかも気がかりだ。
長官発言の重み
このようにみると、「皇族数確保策」とされる中身は、無理が多くリアリティーを欠き、皇室が抱える危機の打開につながらない。
やはり本筋の「安定的な皇位継承」を可能にするために皇位継承ルール自体の変更を目指す以外に解決策がないことが分かる。
このたびの西村宮内庁長官の訴えは、皇室の方々ご自身の願いを代弁したものとして、重く受け止める必要があるのではないだろうか。