業績好調の企業は不祥事が起こりやすい
まず、業績が「好調」な会社と「不調」な会社では、どちらで不正が多く発生しているのだろうか。
直感的には、「不調」組織のほうが、組織の末端に無理が生じて、不正を誘発しやすくなりそうな仮説もたてられよう。実際、不正事件の第三者委員会報告などでもそうした苦しい状況を不正の背景として論じるものも多い。しかし、発覚した不正を事後的に調査しているだけでは、不正発生の原因をつかむのは容易ではない。
パーソル総合研究所の調査による大規模な定量データに基づき、不正発生率を企業業績別に比較すると、業績が悪い組織も好調な組織も不正発生率が高い、「U字」になる傾向が見られた。業績が悪いだけではなく、「良い」ときにもまた不正は組織の中で発生しているということだ。
イケイケ・ドンドンの組織は不正を軽く見る
また、この調査データを用いて、自社は不正が起こっても対処しないだろうとする「組織の不正黙認度」と、個人が不正を許容する「個人の不正許容度」を区別し、不正のリスクを複合的に分析し、それぞれを高めていた組織や個人の特性をまとめたのが図表2である。
複雑な分析のため、さまざまな要因が並んでいるが、本稿で見たいのは「左側」の個人の不正許容度を高める要素だ。先程みた企業自体の好業績の他にも、自由闊達で開放的な組織風土や、スピード感や迅速さを重視するような組織であることなどが並んでいる。
ここからわかるのは、ビジネスの速度感が早く、「イケイケ・ドンドン」のような調子の良い組織では、不正が軽視され、個人の暴走を導きやすいということがわかる。