知名度の高い大手企業の部長クラスによる巨額詐欺事件が相次いで報じられた。パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児さんは「業績が好調な企業ほど不祥事が起こりやすい。特に部長クラスには不正の関与率が高い傾向がある」という――。
写真左=4年ぶりに会場で開催された「Rakuten Optimism2023」に掲げられた楽天モバイルのロゴ、写真右=東京・銀座にあるソフトバンクショップ本店
写真左=時事通信フォト 写真右=iStock.com/winhorse
写真左=「Rakuten Optimism2023」に掲げられた楽天モバイルのロゴ(2023年8月2日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜) 写真右=東京の銀座にあるソフトバンクショップ本店

不正が起こる企業には共通点がある

昨今、企業における不祥事・不正のニュースが常にといっていいほど世間の大きな話題を集めている。企業内の不祥事の中には、組織ぐるみの計画的で大規模なものもあれば、特定の個人が単独で行う悪質な犯罪行為もある。

最近では、楽天モバイルの40代の元部長らが同社から約98億円を騙し取ったとして起訴された詐欺事件や、ソフトバンクの元統括部長が架空事業への投資名目で12億円を騙し取ったとされる詐欺事件が記憶に新しい。こうした大手企業のケースは大きく報道され、企業業績やブランドに甚大な損害をもたらす。

こうした「暴走する個人」による不正行動は、単独の悪意に基づくものが多いために、会社としても防ぎにくいように見える。しかし、筆者らの研究では、個人の不正リスクを上げる要素は、やはり組織・環境といった要因を持っていることがわかっている。そこで本稿では、定量データによって明らかになった個人の不正リスクを上げる要因と、それを防止する処方箋について議論したい。