既婚男女の収入格差を生む「130万円の壁」
専業主婦世帯が減少しているのはその通りですが、フルタイム就業妻世帯と専業主婦世帯の割合は2021年時点でほぼ同等です。共働き世帯が増えたのは、パート就業妻世帯だけが増えていることによります。
つまり、夫婦のうちフルタイムで働く妻の割合は長期的に3割であり、既婚男女間で収入格差がもっとも広がってしまうのは当然のことです。むしろ、注目すべきは、既婚女性のうち35歳以上はほぼ年収中央値が130万円近辺であることです。
これは、いわゆる「130万円の壁」といわれるもので、配偶者に扶養される人がパートなどで働く場合、年収が130万円以上になると扶養から外れて国民年金や国民健康保険の保険料を払う必要が出てくるためです。
平均値にしてしまうとここは曖昧になりますが、中央値にすると明確です。35歳以上の既婚女性の半分が年収130万円の壁を意識して就業していることになります。いってみれば、既婚男女間の収入格差はこうした扶養制度の問題であるといえるでしょう。
この「130万円の壁」が実質上、既婚女性の就業時間の制限になっているということで、政府は一時的にこれを超えたとしても、2年までは扶養内にとどめるという措置を行うようですが、だとしても抜本的な解決にはなりません。
既婚と未婚で「男性格差」が広がっている
一方で、男性の未既婚の格差について見てみると、既婚男性が年齢とともに順調に収入増を実現しているのに対し、未婚男性は25歳以上54歳までほとんど年収中央値が変わりません。これだけを見ると、未婚男性は非正規が多いので年収があがらないのだろうと考えてしまいがちですが、決してそうではありません。
以下の、正規雇用就業者だけを抽出した年代別年収中央値グラフ(図表3)を参照ください。
既婚男性が25~29歳と55~59歳で年収中央値が424万円から667万円へと約1.6倍増になっているのに対し、未婚男性は、同366万円から458万円へと約1.2倍増にとどまります。
正規雇用という同条件で比べても、既婚男性は未婚男性よりすべての年代で年収が高いということになります。
ちなみに、正規雇用者だけで比較すると、未婚男性と未婚女性も、既婚女性もほぼ年収の差はありません。正規雇用に限れば、男女の年収格差はなく、あるのは、既婚男性とそれ以外という格差があるだけということになります。