絶縁を決意した決定的事件

彼は最低限の義理を通すために、母親に入籍することを伝えた。すると母親はまたしても姉に泣きついたようだ。

母親から泣きつかれた姉は、片桐さんの両親宛に11メートルを超える“巻物”を送りつけてきた。その“巻物”は、半紙をつなげて毛筆で書かれた“長い長い手紙”だった。

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内容は、弟の優秀さをとうとうと語ったあと、片桐さんに離婚歴があることなど、弟にふさわしくない点を、「何月何日、蘭子さんは母にこう言った。私にこういう態度だった」などと詳細に挙げ連ね、最後に、「2人の結婚に反対してるわけではないが別れるべきです」と書かれており、読むのに小一時間はかかるものだった。

さらに姉は、片桐さんの実家に電話までしてきて、「入籍させないでください。もし入籍したら一生恨みます」と脅迫。その一連の行為をすべて知っておきながら、彼の母親は、「お姉ちゃんが良くやってくれた!」と褒め称えた。

自分の母親と姉の異常さを思い知った片桐さんの彼は、姉とは完全に絶縁し、母親とは距離を置くことを決意。おかげで片桐さんは、入籍後も義母と義姉と関わらずに済んでいる。

片桐さんの義家族のタブー

筆者は家庭にタブーが生まれるとき、「短絡的思考」「断絶・孤立」「羞恥心」の3つが揃うと考えている。片桐さんの義家族はまさにその典型だった。

「短絡的思考」は、片桐さんの義家族全員に見られる。義母は「息子の幸せのために!」と言いながら、自分の価値観を終始ゴリ押ししてきた。本当に親として息子のことを思うなら、本人が大切にしたいと思った相手と結婚することが一番のはずだが、義母はおそらく、息子がどんな相手を連れてきても気に入らなかったに違いない。義母は息子が40を超えても子離れできてない「依存母」なのだろう。

その影響を多大に受けているのが義姉だ。男尊女卑思想の義父は弟たちばかり目をかけ、マザコンの義母は末っ子ばかりをかわいがるため、姉は両親に蔑ろにされていると感じていたに違いない。両親に対して反発ばかりし、自分が思う通りに物事が進まないと脅迫のような言動をして他人をコントロールしようとするのは、そうでもしないと両親が自分のことを見てくれなかったからだろう。

中間子である義兄は、そんな両親や姉を見て育ったせいか、「事なかれ主義」が染み付いている。常に波風を立てまくり、父親と衝突する姉と、末っ子を異常に溺愛する母親を見ていて、「自分はああならないように」ということばかり重視するあまり、日和見でる癖がついてしまったのだろう。

弟と片桐さんの入籍騒動の間も、弟の肩を持つかと思ったら母親と姉と一緒に責めてくることもあるため、片桐さんは「信頼できない人だ」と感じたという。

義父が転職を繰り返し、家計を支えなければならなかった義母は、子育ては姑に任せきりだった。おそらく義母は、結婚してから義父の会社経営が安定するまで、ずっと惨めな思いをし続けていたのではないだろうか。

だから義父の経営が軌道に乗った途端に専業主婦となり、かいがいしく末っ子の世話をし始めたのだ。想像する限り、この義母に職場で良好な人間関係を築くことができたとは思えない。実際、近所や親戚付き合いでもマウントを取りたがり、トラブルになることが少なくなかったようだ。そのうえ、義父による祖父母たちとの口論の末、親族から絶縁されていたのだ。片桐さんの夫の家族は、社会から「断絶・孤立」していたと言っても過言ではないだろう。

そして夫は39歳で片桐さんと出会い、入籍をめぐる母親と姉の異常な言動を目の当たりにし、「羞恥心」を感じるに至ったわけだ。