こうなると、盗難対策の要である「iPhoneを探す」は、もはや使うことができない。Appleのシステムから見れば、アヤスさんはもうiPhoneの持ち主でも何でもない、赤の他人だからだ。自宅のMacBookにもログインできず、所有するApple製品から完全に閉め出された。

ただでさえスマホを失い、なすすべなくただ肩を落とすアヤスさんを、さらなる悲劇が襲った。24時間と経たないうちに、銀行口座から多額が引き出されていることに気づいたのだという。

被害額をたずねるウォール・ストリート・ジャーナル紙のリポーターに、アヤスさんは表情を一段とこわばらせる。「1万ドル(約130万円)ほどです」。

同紙によると、このような被害は多発しているのだという。ほかにも3万5000ドル(約465万円)を失ったという被害者からの報告が同紙に寄せられているほか、ニューヨークだけで「幾多の被害者」が存在すると同紙は報じている。

摘発されたiPhone窃盗団、被害総額は3680万円に上る

これとは別に、米CBS系列のミネソタ局は、12人が関与する「高度に組織化された」犯罪により、男性がiPhoneを盗まれ1万5000ドル(約200万円)が口座から流出したと報じている。

同州のスター・トリビューン紙によると、この窃盗団はすでに告発された。記事は、「40人以上の被害者からアプリを通じて盗み出された金額は合計27万7000ドル(約3680万円)に上る」と述べ、大規模な犯罪であったと報じている。

ミネソタの窃盗団が告発されたことは朗報だが、残念ながら被害がこれで収まることはなさそうだ。同様の被害はデンバーやボストンなど全米各地ほか、イギリスのロンドンでも報告されている。各地の犯罪集団が暗躍していると考えられる。

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すべては「6桁のパスコード」を盗み見られたことから始まった

携帯を盗まれただけで、なぜあらゆる資産とデータを失った揚げ句、自宅にあるMacまで使えなくなってしまうのだろうか? iPhoneはパスコードでロックされており、金融機関にはまた別の暗証番号を使用しているはずだ。Macのログインパスワードも、Apple IDのパスワードも、それぞれ異なる。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、その手口を次のように解説している。まずiPhoneのパスコードの奪取は、原始的な手段で行われる。多くの被害者に共通しているのは、バーで新しい人間と親しくなり、その後iPhoneを奪われるというパターンだ。