虐待、輸血拒否を正当化する三段論法

〈エホバの証人〉

①「子どもの鞭打ち」に正当性を与える三段論法

【大前提】
アダムの子孫にはみな懲らしめが必要である。懲らしめは言葉で正す以上の形をとることが必要であり、ときには、しっかりと懲らしめるために鞭で痛みを加える必要がある。鞭打ちを控える人は子どもを愛していない。懲らしめは愛を動機とすべきであり、子どもを愛する人は懲らしめを怠らない。

【小前提】
私は子どもを愛する母である。

【結論】
私は我が子を懲らしめる。ときに痛みを与えるために鞭で打つ。

②「輸血拒否」に正当性を与える三段論法

【大前提】
聖書には「血を避けなさい」という言葉が何度も出てくる。よってエホバの証人の信者は他人の血を自らの体内に入れてはいけない。

【小前提】
我が子が交通事故に遭い、出血多量のため輸血が必要と告げられた。

【結論】
たとえ命が助からなくても、輸血を拒否する。

このような教団は、ひとたび入信すると、こうした三段論法によって、世間一般の常識から大きく外れた理屈にも、「これこそが正しいのだ」としたがわせてしまいます。

ゆがんだ大前提をもとに、ゆがんだ結論を導き出す

三段論法の仕組みをたびたび悪用するのが、消費者被害を巻き起こす悪質業者やカルト的な団体です。

カルト的な団体は、宗教団体にかぎらず、違法な経済活動を繰り返し行うマルチ商法や自己啓発セミナー団体、政治的な行動を主とする団体(過激派や陰謀論を吹聴する団体)も含まれ、それぞれ宗教カルト、経済カルト、政治カルトなどと呼ばれる場合もありますし、これらが複合的に組み合わさっている団体もあります。

紀藤正樹『議論の極意 どんな相手にも言い負かされない30の鉄則』(SB新書)

私は長年こうした団体の被害者を救済してきました。団体は、まず対象となる相手に言葉巧みに近づき信頼関係を獲得します。その後に一般の社会とは異なる価値観を吹き込んでいきます。最初は善良だった人が、いつの間にか人を騙してお金を奪っても何ら痛痒を感じない人格に変えられるなど、ゆがんだ大前提をもとに、ゆがんだ結論を導き出す理屈を植えつけられます。

相手を騙してお金を奪うことがかえって相手の運気を上げる、死んだら天国に行ける、世の中では知られていない真実があり、それを知ることができたあなたはラッキーである。このように騙って、人を取り込もうとするのです。

このような例はかなり極端に感じるかもしれませんが、要するに、「大前提に小前提を入れると結論が出る」という論理の構造上、おかしな結論の背景には必ずおかしな大前提があるということです。

「この結論の大前提は何だろう?」と考える癖をつけてほしい

ですから、相手が出している結論に納得できないときや、ちょっとでも違和感や疑念を抱いたとき、強く言われて流されそうになったときは、「この結論の大前提は何だろう?」と考える癖をつけてください。

するとモヤモヤが晴れて、相手の大前提のおかしいところを突くことで結論のおかしさを指摘したり、「私はあなたとは違う意見です」と筋道立てて説明したりすることができるようになります。

三段論法の仕組みをしっかり理解すると、こうして相手の理屈のカラクリを見破り、自分の立場をはっきりさせて、主体的に議論に参加できるようになります。さらに、相手に騙されにくくなるという耐性をつけることができます。

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