「憧れてしまったら超えられない」

大谷がホームランダービーに出場することで、日本人はメジャーリーガーのパワーには敵わないだろうというマイナスの固定観念を、前向きなマインドに変えたかもしれない。最強の米国代表には太刀打ちできないかもしれないという弱気を、強気なマインドに変えたかもしれない。

勝負を挑む前、まずはメンタルの偏見を打ち破る必要がある。WBC決勝、試合前の声出しで伝えたメッセージは、今後も語り継がれる名言だ。

「僕からは1個だけ。憧れるのをやめましょう。(相手の米国代表には)ファーストにゴールドシュミットがいたり、センターを見たらマイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたり、野球やっていれば誰しもが聞いたことがあるような選手たちがやっぱりいると思うんですけど、今日一日だけは、憧れてしまったら超えられないんで。僕らは今日超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう。さあ行こう!」

斎藤庸裕『大谷翔平語録』(宝島社)

試合後、改めて真意を語った。

「僕らは知らず知らずのうちに、アメリカの野球にリスペクトを持ってますし、ただでさえ素晴らしい選手たちのラインアップを見るだけで、尊敬のまなざしが弱気な気持ちに変わることが多々あるなかで、今日一日だけはそういう気持ちを忘れて、対等な立場で、必ず勝つんだという気持ちをみんなで出したいと思っていました」

何事も戦う前に、挑戦する前に諦めない――。ホームランダービー出場も、WBC優勝も、二刀流の挑戦も、屈しない強い気持ちがあってこそ。そんなメッセージが伝わってくる。

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