日本球界にとって大事なこと

ホームランダービーに出場する意義は他にもあった。大谷はメジャー1年目から、怪力のスラッガーにも負けないパワーを見せつけてきた。2年目、打者に専念していた2019年シーズンもホームランダービー参戦への期待は高まっていたが、オールスター出場が叶わなかった。その当時から、大谷はホームランダービー出場へ意欲を見せていたのだ。なぜなのか。

「僕というよりは、日本の野球界にとって大事なことじゃないかなと。そこを出るかどうかも、勝つか勝たないかも大事だと思うので、いろんな選手がいるなかで(日本人として)出場するのは大事かなと思います」

剛速球で三振を奪い、本塁打で魅了する、豪快なパワー野球のメジャーリーグ。投手力や堅実な守備、小技を生かして1点を取りにいくスモール・ベースボールが主流の日本野球――。大谷がメジャーでホームランアーチストとして活躍する今でも、このイメージは残る。だが、お家芸の投手力や走力にパワーが加われば、日本の野球はさらに強くなる。それは、2023年3月のWBCで証明された。

スモール・ベースボールが主流の日本野球――。大谷がメジャーでホームランアーチストとして活躍する今でも、このイメージは残る(写真=Mogami Kariya/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

手応えを感じたのは、精神面の強さでありパワー

米国との決勝戦を制し、3大会ぶりの世界一を決めた試合後のインタビュー。FOXスポーツの解説者で野球殿堂入りしているデービッド・オルティス氏から「真面目な話だが、どこの惑星から来た?」と大谷は問われた。

「日本の田舎というか、本当、チームも少ないようなところで(野球を)やっていたので。日本の人たちからしても、頑張ればこういうところで(優勝)できるんだっていうのは、本当によかったかなと思います」

初のWBC出場を通じ、日本野球のレベルアップも体感した。手応えを感じたのは、技術やスピードだけでなく、精神面の強さでありパワーだった。

「誰も諦めなかったので、技術うんぬんではなく、そこが一番かなと。実際に(侍ジャパンに)来てみて思ったのは若い選手たちの投手力、とくにスピードに関しては確実に上がっている。いい傾向だなって思ったので、そこは本当に僕が日本にいた時よりも、ワンステップもツーステップも上がっているなと思いました」