知った夫の反応はどうだった?

「激怒されると思ったんですが、淡々としていました。夫も薄々気づいていたようです。やっぱりなって言われました。妙に機嫌がよくなったし、お洒落になったし、俺や娘にも愛想がいいし、何かあるんだろうなって思ってたけど、そういうことだったのかって」

あなたはどう対応したの?

「必死に誤解だって言いました。性格の悪いママ友に悪い噂を流されていて、あちらの奥さんがそれを信じてるだけだって。そしたら、証拠の写真やらスマホのデータを突き付けられました。すでにあちらの奥さんから渡されてたんです。浮気も許せないけど、嘘をついて取り繕おうとしたことはもっと許せないって言われました」

夫から向けられた視線

逃げ道はなくなった。

「その時の、夫の私に向けた冷ややかな目、突き放すというか、軽蔑というか、忘れられません。もう、言い訳出来ないことがわかったので、ひたすら謝罪しました。一時の気の迷いで今はとても後悔しているって、いちばん大事なのはあなたと娘で、どんな償いもするから許してくださいと、とにかく言葉を尽くして謝りました」

いわゆる浮気のテンプレ言い訳を並べたわけだ。

「でも、本当にそうなんです。家庭を壊す気はまったくなかったですから。そしたら今度はラインの履歴を出されて」

それもすでに握られていた。どんなラインを交わしていたのだろう。

「夫の愚痴です。もう心は離れてるとか、男として見られないとか、そういうことです。でも、それは本気じゃないっていうか、つい調子に乗って心にもないことを書いてしまっただけなんです。そういうことってあるでしょう?」

同意を求められても困る。

「でも夫はとても自尊心を傷つけられたみたいです」

書かれた方としたら当然の反応である。立場を入れ替えてみればわかるはず。自分のことを、夫がそんなふうに浮気相手に言っていたら、あなたは許せる?

「そうですよね……」

男女の関係は、ふたりの意志で始まり、片方の意志だけで終わる

その後の展開を教えてもらおう。

「夫があちらと4人で話し合いをしたいと言い出しました。それで彼に相談したのですが、彼はもう精神的に参ってしまっていて、とてもじゃないけれどもそんな場には出向けないし、もう別れるって。驚きました。あんなに好きだ、愛しているって言っていたのに」

男は逃げたんだ。

「はい……」

男女の関係は、始まりはふたりの意志が必要だが、終わりは片方の意志だけで決まる。それまでどんなに愛し合っていようと、どちらかの心が変われば終わりなのである。

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恋愛が理不尽なものだということぐらい、大人の彼女が知らないはずはないのに、恋愛はここまで人を幼稚にしてしまうのか。

「愕然としました。私がこんなに辛い思いをしているのになんでって。優しい人だと思っていたのですが、ただメンタルの弱い人だったんだって、その時わかりました」

それは彼が豹変ひょうへんしたというより、元々、彼女が自分の見たいようにしか彼を見ていなかったとも言える。彼女が「心から私を愛してくれている」と思っているのも、実は「心から私を愛してくれているはず」なのである。