なぜ中学生と一緒に給食を食べたのか
――髙島さんは高校卒業後に東京大学に入学。その半年後の秋にハーバード大学に入り直した。高校時代は、日米のトップクラスの大学に入るべく、まったく異なる方式の入試に向けて努力を重ねた。
本当にシンプルな話で、やりたかったから、ダブル受験したわけです。挑戦してみたいと思って。灘の先輩で、ハーバードに進学した人がいたんですよ。「髙島はアメリカの大学に進んだほうがよい」と声をかけてもらったんです。私は日本で生まれ育ち、海外で暮らしたことはありません。最初は「絶対無理ですよ」と言ったんですが「見学だけでもしてみたら」と誘われて、高校2年生のときにハーバードを見に行きました。
すると、学生たちの目の輝きが違うというか。自分で道を切り開いていくという意欲や自信が感じ取れたんです。この環境の中で勉強するのはすごく面白そうだなと、魅力的に感じ、目指し始めました。
アメリカの大学が秋から始まることはもちろんわかっていたので、3月に高校を卒業してからの半年間をどう過ごそうかと思ったんですね。東大に進学した先輩に相談したら、面白そうなゼミがあり、受講してみたいなと。素直に面白そうだなと思ったから挑戦したという感じですね。
ダブル受験をすることであぶ蜂取らずになるかも、という心配をする人もいるでしょう。でも私は原則楽観的なんですよ。
自分が挑戦したいことがあり、それが成功するか失敗するかわからないことってあるじゃないですか。
もちろん失敗することも考えます。頑張ってもどうにもならない部分というのは絶対あって、そこはある程度、悲観的にどうやったら失敗を避けられるかを考えます。でも、これだったらいけるかなと思ったときには、楽観的にやってみる。悲観力と楽観力のバランスというんでしょうか。いけるかなということを前向きに考えるタイプかもしれないですね。
ただ、私の場合は正直に言うと、高校2年生の時点で東大受験に勝算があったから、できたんだと思います。東大の合格からほど遠いという状況だったら、踏み込めていなかったかもしれません。
そういう意味では、無謀な挑戦をしているように見えて、本当に無謀な挑戦はしていない。悲観的にある程度考えたうえで、ここは大丈夫かな、ここは多分何とかなるんじゃないかなといった線はちゃんと引いているつもりです。
――当選後、髙島さんは市立中学を訪れて、一緒に給食を食べながら生徒たちと談笑している。
今後のまちづくりや人口減の日本社会を考えたとき、子供の教育が圧倒的に大事だと思っています。
私自身は、恵まれた教育を受けてきたと思います。多くの「本物」に出会わせてもらえた。中高時代では、教科書に書いてある、通り一遍のことを言うのではなく、本質から説明をしてくれる数学の先生に教わりました。卒業生をはじめ、さまざまな分野で活躍する人たちと会い、疑問を直接ぶつける機会もいただけた。
大学でもそういう人との出会いがたくさんありました。ある分野について知りたいと思ったときに、その分野を本当に引っ張っているトップクラスの人に直接話が聞ける。これはすごく貴重な経験ですよね。
いわゆる偏差値的な価値観とは別で、「本物」との出会いにたくさん恵まれたことが、すごくありがたかったと思っています。市長になった今、その経験をどのように未来世代に還元していくかを考えています。
これからを担う子供たちが、そのような経験をできるようにするにはどうしたらいいだろうか。私自身がその一助になればいいと思いますし、子供たちと「本物」とをつなぐことができたら、と。
市長としてそれを実現させるため、職員・市民・企業などを巻き込んで、できるだけ主体性をもって自走できるチームをつくり、課題に挑戦していきたいと思っています。