昭和的価値観も年齢面ではずいぶん進歩した

たとえば、「年齢は男が上で、女が下」という結婚観については、だいぶ緩和しました。第10回に書いた通り、現在、結婚する4組に1組が姉さん女房となっています。「35歳以上の女性は出産が難しい」という誤った常識が取り除かれれば、さらに、年齢面での結婚観は変わっていくでしょう。

学歴や年収、役職については、男性がやや下あたりまで、ウイングを広げることはできそうです。前回述べたように年功的な人事制度を変えることで、30代で仕事面での将来性が見えるようになると、パートナー間で稼ぎと家事育児の分業について話し合いやすくなります。仕事面で活躍できそうな女性の場合、学歴や役職が自分よりやや下であっても、仕事をほどほどにして家庭重視の決断をしてくれる男性なら結婚相手として選ぶという判断ができるようになるからです。

これから5年、非正規の給与・待遇が大きく改善する

非正規雇用の給与・待遇を上げ、「できる女性」との格差を減らすことも処方箋の一つとなるでしょう。こちらは大いに可能性がある話です。これからしばらくの間、日本では非正規雇用の待遇が大きく改善せざるを得ないからです。

日本は、1995年から生産年齢人口(15~65歳)が減少に転じました。本来ならそこから労働力不足となるのですが、それまで職に就いていなかった高齢者や主婦が、パートやバイトで雇用されるようになり、不足分を補いました。それで、人口減少下でも、労働者は増え続けたのです。ところが、ここ数年、この雇用シフトが変調を来たし始めました。

まず、65~74歳の高齢者(前期高齢者)が減少し出したのです。2022年から2027年までの5年間で約250万人も激減します。

続いて、主婦の非正規雇用が減少し始めました。今まで、女性は結婚や出産で家に入り、その後、子どもが修学期になるころ、パートとして働き出すのがお決まりのコースでした。ところが、大卒→総合職として働いてきた女性たちは、企業も辞められたら困るため、育休→時短復帰という形で正社員のまま継続就労する人が増えたのです。結果、女性正社員の数は毎年30万人ペースで増え続け、一方、非正規は2019年をピークに年間30万人も減少しています。女性の正社員数と非正規の数が逆転する日も近いでしょう。

図表=筆者作成
※出所=総務省「労働力調査」詳細集計

このところ、飲食やコンビニのバイトで、最低時給とはかけ離れた高給な募集チラシを見かけます。東名阪の好立地店であれば、昼間時給でも1500円を超え、夜間はいわずもがな、でしょう。それは、高齢者が毎年50万人、主婦非正規が毎年30万人も減少しているからなのです。

こうして生じた人手不足を、業務の自動化や外国人材で対応しようにも、年間80万人の欠損はそうそう埋まりません。ベビーブーマー世代が後期高齢者に移行し終える2027年あたりまで、非正規人材の絶望的な不足は続くでしょう。そうして、非正規雇用の時給は2000円に迫るのではないでしょうか(最低賃金は遅々としたアップでしょうが)。

写真=iStock.com/takasuu
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