女性向きの仕事にも2、3割の男性が就いている状態が自然
たとえば、男女では身体能力に厳然たる差があります。
高校3年の50m走の平均値は、男子7.13秒、女子8.91秒と、大差で男性に軍配が上がります。平均値で見れば「男は走るのが得意、女は苦手」となるでしょう。
でも、個人を見たとき、並みの男性よりも速い女性は多々います。
たとえば、町内会でも会社でも学校でもかまいませんが、走るのが速い・遅いに集団を二分したとします。そのうち「速いほう」は男性ばかりで、「遅いほう」は女性ばかりになりますか? そんなことありえないでしょう。
速い方でも、たぶん、2~3割は女性が占めるはずです。
ジェンダーバイアスの話を考える時は、この事例を頭に置いてほしいのです。
性差偏重の人は、「平均値」で男女を分け、「100:0」という主張をしがちです。
そして、それを批判されると、「じゃあ、男も女も50:50なのか」と強弁が続く……。
確かに平均値では差があるけれど、個人で見た場合、「男性向き」という項目にも女性が2~3割入る。同様に「女性向き」という項目にもやはり男性が2~3割入る。それが、自然な状態なのでしょう。
それ以上に偏りが激しい仕事を見た時は、「何らかの社会的バイアスが働いている」と考えること。そして、その偏りを是正するような施策を望むべきです。
性差以上に男女比を開かせる「悪慣習」
かつて営業の職場も、「女性には無理」と言われてきました。ただ、そこにあったのは性差ではなく、商慣習の問題です。たとえば、取引先が無理難題を言い、営業スタッフが深夜に、棚卸しや商品入れ替えをやらねばならないとか。外注の職人さんたちの気性が粗く、時にはセクハラまであったりするとか。こうした悪慣習が「当たり前」になっていて、だから女性が働けなかったのです。それが、ブラックな商慣習を正すことで、女性も活躍できるようになってきました。
こうした進歩が各所で起こるべきでしょう。
もちろん、看護師や保育士、庶務や事務でも20%程度は男性が混じってしかるべきと考えます。