非正規の待遇改善は欧州型社会への入り口
時給2000円ともなると、フルタイム勤務なら年収350万円になります。同時に、労働環境もブラックな評判が立てば採用が滞るので、向上するでしょう。雇用調整弁として契約解除されることも減るはずです。
昨今では「年収の壁」※を超える労働を促すために、昇給・時間延長の助成金が盛んに策定されています。そのことが、非正規の賃金アップをさらに促進するでしょう。
※主婦労働者が、社会保険料や所得税などで優遇される「扶養内」に年収を抑えるために生まれる労働時間抑制
こうなってくると、非正規雇用に対するイメージも徐々に改善されるでしょう。
そしてもう一つ。非正規の人件費が高まると、企業はそれを販売価格に転嫁せざるを得なくなります。その結果、販売・飲食・サービス業で、軒並み価格上昇が起きるでしょう。
こうして価格が高くなると、利用者・購入者は減る。その結果、労働需要も収まり、人材不足もようやく終息するという「市場による調整」が起きるのです。
その頃の風景は、現在の欧州を彷彿とさせるでしょう。
「ハンバーガーとコーラを買ったら1000円だった!」
こんな話をよく旅行者がしますね。だから、欧州では日本ほど、外食やサービス業は利用せず、家で済ませるのが普通です。自炊しクリーニングも家でするようになると、社会はどう変わるでしょう?
こうした家事は一人分も二人分も大差はないので、共同生活で分業したほうが一人当たりの負担は減ります――結果、独身より結婚を選ぶ人が増える!
そう、日本は飲食・サービス単価が安く便利すぎるから、結婚が進まない、などとも言われているのです。ここにもメスが入りますね。
男女平等化は、50:50を目指すわけではない
ここまでやっても、まだまだ、昭和的な結婚観はなくならないでしょう。
私は、この際、徹底的に社会に存在するジェンダーバイアスにメスを入れるべきと考えています。
前述した通り、庶務や秘書という仕事は女性ばかりで男性がいないことをどう思われますか? 看護師は91%が女性、保育士は96%が女性です。
いまだに「そういう仕事は女性が向いている」という一言で片づけていませんか?
こうした話をすると、
「男女で向き不向きはある。鳶職や長距離ドライバーは男が多数だ」
「どの職業も男女が同数じゃなきゃならないのか」
といった反論が出てきそうですね。
もちろん、私も性差は存在し、仕事でも趣味でも、男女の偏りはあると考えています。ただそれを認めた上で、3つの原則を頭に置いてほしいのです。
2.性差を認めても、100:0というわけではない。
3.平等化とは、50:50を言うのではない。