機械が故障する原因はオス同士のケンカ
ハイビジョンカメラで撮影できるのは十数時間。ほとんどが寝てばかりなのは、取り付けて回収する手間を考えると実にもったいない。というわけで、最近ではこの撮影できる尺をうまく有効利用できるように工夫している。例えば、30分に1回、15秒ずつ撮影するとか、朝の6時から夕方の6時の間の、00分と30分に15秒ずつ撮るなどの設定をして、尺を無駄にしないようにするわけだ。
また、クマを捕獲しやすい時期は6〜7月だが、秋の行動を見たい場合はカメラを止めておいて9月から撮影できるように設定することもある。
しかし、1回の撮影時間が短すぎると、それはそれでもどかしいこともある。ちょうど撮影しているときにほかのクマとケンカを始めて、「おおっ」と手に汗握ったところで映像が途切れて、次の録画にはもう相手がいないということもしょっちゅうだ。
もっと長時間撮影できればいいのにと思うが、そこは今後の技術革新に期待したい。
ちなみに、「クマに付けても故障しやすいのではないか」というメーカーの忠告は今のところはずれている。特にオスはケンカをするので、相手に機械を咬まれて故障することが多いのだが、奇跡的に私たちが使うカメラ付き首輪は故障知らずだ。
カメラ付き首輪を用いた調査のノウハウはずいぶん蓄積できてきた。回収率も6割から7割でGPS首輪が出始めたころを考えれば驚異的な数字になってきている。そして、この映像によって新発見が相次ぐのであった。
クマが登山道を使って移動することが初めてわかった
回収できたカメラの中には、未知の光景を撮影していたものもあった。初期のころのカメラで撮った動画は、今見るととても粗いのだが、移動するのに登山道を使い、山小屋や標識の横を通っていることなどが初めてわかった。
また、これまで木の幹についた爪痕やクマ棚から、クマが木に登ることはわかっていたが、実際にその様子も映像で確認できた。あのずんぐりむっくりした体形からは想像がつかないくらい、ヒョイヒョイヒョイッと軽やかに登るのである。