高価な最新機器がすぐおしゃかに…クマの破壊神ぶり

技術革新によって小型化されると陸の動物にもカメラを付けることができるようになった。

海外ではペットのネコに装着することが多いようだ。完全室内飼育が主流になりつつある日本とは違い、海外では放し飼いが多くてネコが行方不明になることがよくある。そこでカメラを搭載して行動パターンやよく行く場所を把握すれば、いなくなっても格段に見つけやすくなるというわけだ。

野生動物では、前脚でカメラを外せないのでシカによく使われている。では、クマはどうだろう。そう思い、バイオロギング用のカメラのメーカーに問い合わせてみた。

「シカ用のカメラってクマにも使えませんか?」
「いや〜、クマはシカと違って凶暴ですからね。しかも、前脚で外そうとするんじゃないですか? もちろん装着はできますけど、壊れることが多いんじゃないかな。故障や破損があっても保証はできませんが、それでよければお使いください」

まあそうだろう。トラップ、GPS首輪、ビデオカメラ、心拍数の記録用機械……。クマの破壊神ぶりには今までも散々泣かされてきたし、最新の高価な機械を投入するたびお星様にされてきた。

首輪を回収しなければカメラのデータは見られない

しかし、やってみないことにはどうなるかはわからないし、問題点の洗い出しもできない。そこで、メーカーでは保証はしないという条件で購入し、クマに装着することにしたのである。これが2014年のことだ。

最初に購入したモデルは、まだハイビジョン撮影もできず、録画可能時間も4〜5時間だった。買った首輪は、まず奥多摩のクマに装着した。首輪はタイマーを設定して自動的に外すことができる。しかし、クマはしょっちゅう崖を上ったり木に登ったりするので、勝手に外れる設定だとどこに落とされるかわからない。カメラが録画したデータは内蔵メモリに記録される。つまり、首輪を回収しなければ見ることができないのだ。

「リアルタイムで録画データを転送したりできないの?」

そう思った人もいるだろう。ただ、データ転送は電力消費が激しいので、すぐに電池が切れてしまう。

だから、GPSでクマの位置を確認し、「ここで落とせば拾えるぞ!」というタイミングでリモコンを使って落とすことにした。

それでも、首輪は思わぬところに落ちてしまう。例えば学生がリモコンで落としたところ、首輪が崖を転がってしまい、滝の踊り場のようなところに落ちてしまったことがあった。

季節は6月の梅雨時。滝は水量が多くてとても手が出せなかった。こうなると回収作業は水量が減る梅雨明けである。問題は現場だ。どうやら沢登りやロープワークの経験がある私にも歯が立たない難所らしい。