電力供給という盲点
また、高層マンションの安全性は周囲の環境や地域の特性にも左右されます。一般的に高層マンションには、地震発生時や停電時に備えて非常用発電機が設置されています。また、非常用電源装置(UPS)という、短時間の停電や電力の一時的な喪失に対応するための装置もあります。UPSは無瞬断(一瞬も停電することなく)で電源を供給できますが、長時間の電源供給ができません。
非常用発電機は電源供給までに時間を要しますが、長時間の電源供給が可能で、停電時にもエレベーターの運転や非常用照明などの必要な設備に電力を供給します。ただし、大規模な地震や災害の場合には、電力供給が途絶える可能性もあります。
地震が直接の原因ではありませんでしたが、2019年の台風19号により、神奈川県の武蔵小杉駅周辺のタワマンが水害に見舞われ、地下3階にあった電気設備などが浸水したため、長期間にわたって停電、断水し、マンション住民の生活が機能不全に陥ってしまいました。
高層マンションの場合、電力が供給されないと、エレベーターが止まり外に出ることも困難になってしまうというリスクがあるのです。免震構造のタワマンは地震には強くても水害には弱いことが判明し、現在では従来地下にあった電気系統の供給設備を2階以上に設置するなど対策が取られているようです。
高層マンション、タワマンなら災害時でも安全という「安全神話」を信じるのは危険です。「最新高層マンションだから安心」という宣伝文句は一般的な傾向や期待値を示しているものであり、個別の物件や状況に関しては慎重な判断が必要です。
購入や入居を検討する場合は、建物の設計や構造、管理体制、周辺環境などを詳しく調査し、専門家の意見や情報を参考にするようお勧めします。