転職した物流会社も手取り14万円以下で毎月赤字

1人暮らしの家賃と光熱費、食費に加え、地方では必需品の車のローンとガソリン代、さらに携帯電話代などを払うと、毎月赤字になった。2022年2月からのウクライナ戦争開戦後の物価急騰が、これに拍車をかけた。親やきょうだいから食料を送ってもらってしのぎながら、仕事の合間を見て再びハローワークに通った。だが、女性を対象にした求人で、生活できる賃金水準の仕事はなかなか見当たらなかった。

1年近く求職活動を続け、2022年春、ようやく手取り月17万円の大手企業のシステム入力の仕事が見つかったが、待遇は不安定な派遣社員だった。「女性の事務系の仕事の求人は派遣社員ばかり。選択の余地はなかった」とチヅルは話す。

出典=『女性不況サバイバル』(岩波新書)

正社員を目指し求職活動をしても希望の仕事には就けない

チヅルの体験は、必ずしも特異な例ではない。

2021年8月、野村総研は、「コロナによるシフト減パート・アルバイト就業者の転職意向に関する調査」を行っている。転職したいと考えている20歳から59歳のパート・アルバイト女性2060人を対象にしたインターネットによるアンケートだ。

調査では、転職先を探すパート・アルバイト女性は3割に及び、うち4人に1人近くが半年以上求職活動をするなど、求職活動の長期化という状況が浮かび上がった(図表2)。

コロナ禍の影響が及ばない業種などへの転職希望があるにもかかわらず求職活動を始めていない女性も3割にのぼったが、うち4人に1人が「収入が得られない期間ができると困るから」を理由に挙げた。

また、転職を希望する女性の8割超が、資格取得や職業訓練にかかる金銭的負担の軽減、その期間の経済的不安感を解消する制度が新しい仕事に挑戦しやすくする、と回答している。低収入で貯えも乏しく、失業手当などの不備で働き続ける以外生活を支える方法がない女性たちの現実がそこにある。