そもそもの生活コストで老後の必要額は大きく増減する

老後のマネープランは生活水準の問題でもあります。「公的年金収入で老後の生活費はやりくりする」「旅行や贅沢ぜいたくはほとんどしない」と決めてバランスを取ってしまえば、老後の経済的不安は、病気や介護の負担だけに抑えられます。

基本的な収支(年金収入=日常生活費)がイコールであれば、老後破産のようなことも絶対に起きません。

逆に老後の生活水準を高くしたい場合は公的年金が多くても、それこそ「老後に4000万円」あっても不足することがあります。「やっぱり月40万円くらいは使いたいよ」と思えば、(支出:40万円×35年)-(収入:月22万円の年金×35年)となってしまい、「老後に7560万円」になってしまうわけです。

自分にできる「老後に×万円」の準備と、実際に自分が使う「老後に×万円」を考え、リンクさせれば老後は怖いものではなくなるのです。

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公的年金はどれくらい老後の頼りになるのか?

老後のお金の問題を考えるとき、欠かせない理解として「公的年金」について少しだけ触れておきましょう。いわゆる「老後に2000万円」問題が話題になったとき、そもそもの公的年金の破たんの問題と結びつけて「どうせもらえないのだろう」と結論づける人が多くいましたが、これは明らかな間違いです。

本当に老後に必要なお金は「億」に近い水準です。実際の老後の生活を現在の実勢から月25.5万円とし、65歳〜100歳までの財源を確保しようとすれば総額は1億500万円となります。

しかしながら、誰もが1億円を貯めてリタイアするわけではありません。現実には月22万円くらいを公的年金が用意してくれ、これは老後の35年で累積すれば9240万円となり、自力で準備する分が「老後に2000万円」というわけです。

実は日本の年金制度には、それくらいの価値があります。