「公的年金が破たんする」という大ウソ
公的年金の破たんについても、いまだに信じている人がいます。
しかし日本の年金制度が破たんすることはまずありえません。まず積立金を200兆円以上持つ国は日本とアメリカしかありません。もし積立金が足りないというなら、先進国のほとんどすべて、日本より人口の多い新興国のすべてが日本より破たんリスクが高いということになります。
でも、決してそんなことはありません。
「1人の現役世代が1人以上の老後を支える未来になるから破たんする」というロジックもミスリードです。今の高齢化比率と、「40年後に75歳がリタイアする社会になった未来」の高齢化比率は実はほとんど変わりません。
今でも70歳現役社会が実現しようとしていますし、70歳の男性のほぼ半数はすでに働いている世の中です。今維持されている年金制度ですから、40年後も維持できるのは当然です。
基本的に、公的年金破たん論はテレビの視聴率や書籍や雑誌の売上部数獲得の「見出し(キャッチコピー)」であるか、金融機関が商品販売に使う「セールストーク」なのです。
年金水準を引き下げても年金が破たんしない理由
ただし、公的年金水準に引き下げ計画があることは事実です。
2023年春、物価上昇率が2.5%ですが、公的年金の改定は2.2%増でした。金額としてはアップしますが実質的な水準目減りを行ったものでした(マクロ経済スライドというものです)。これをしばらく繰り返して年金水準を調整し、結果として破たんをありえないものとしていくことになります。
これも年金破たんが絶対にありえない理由のひとつですが、ひとりひとりの生活には影響が出てきます。目減りすることは間違いないからです。
こちらについては「繰り下げ受給」という選択肢があります。例えば67歳まで働いてそこから年金をもらえば16.8%、68歳まで働いてそこから年金をもらえば25.2%も年金額が増え、それを一生もらい続けることができます。
公的年金水準の目減りは2~3年の繰り下げでカバーできると試算されており、最大で75歳まで繰り下げをすることができます(なんと84%増)。すでに60歳代後半の50%が働いている時代ですから、未来において繰り下げの年金を受けることはそう難しいことではないと思います。
普通に暮らす私たちは「日常生活費くらいはなんとかやりくりするお金は年金でもらえる」「でも老後のゆとりは国からもらえない」「でも何年長生きしても死ぬまで振り込んでもらえる」という年金の安心感を理解し、普通に加入して普通に公的年金をもらっていけばいいのです。
そのうえでお金を貯めれば貯めた分だけ、「老後にやりたいこと」が増やせると考えましょう。「老後に2000万円貯めた人」は「老後に2000万円使っていい人」なのです。そう考えるとがぜん、積み立て意欲は増してくるはずです。