「あふり」の名称は「公のもの」と訴えている

そして、巧みさのもうひとつは「商品を全て廃棄処分すること等を要求」と暴露している点だ。品質に問題のない日本酒を、同じく食に携わる企業が「捨てろ」と要求する。この一文を批判するSNSのコメントが相当数、見受けられた。この一文でAFURI社の倫理観の欠如を印象づけることに成功している。

その上で、吉川醸造の銘柄「雨降(あふり)」の名前の由来について「お知らせ」のなかで説明している。

「雨降(あふり)」銘柄は、丹沢大山の古名「あめふり(あふり)山」と、酒造の神を祀る近隣の大山阿夫利神社(以下「阿夫利神社」といいます)にちなんで命名したものであり、ラベル「雨降」の文字も阿夫利神社の神職に揮毫していただいたものです。

吉川醸造の日本酒「雨降」はラーメンの「AFURI」に由来するものでは当然なく、地元の代表的な山の名にちなんだもの。つまり「あふり」の名称は「公のもの」と訴えているのだ。

大山阿夫利神社 下社(神奈川県伊勢原市)(写真=Tak1701d/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

吉川醸造は、自社を「地域代表」に据えた

さらに「お知らせ」の終盤にある次の一節は、広報戦における「両社の位置付け」を決定的なものとしている。

AFURI社では現在「阿夫利」「AFURI」で構成される商標を、「ラーメン」以外に150種類以上の物品・役務について取得しております。
伊勢原市の施設にAFURI社に対する商標関連の苦情文が届いたと聞いたこと、また最近では「あふり」に関する名称を持つ事業を営む地元企業の代表からも不安を打ち明けられたことなどから、当社としても一定の情報開示をする責任があるのではないかと考えるに至りました。

AFURI社は日本酒「AFURI」に何か特別な思い入れがあるわけではなく、「片っ端から」地名の「阿夫利」「AFURI」の商標を獲得していると指摘。その上で、不安を抱いている伊勢原市の公的施設や地元企業の窮状を訴えている。

吉川醸造の「お知らせ」の文章は、AFURI社は「傲慢で、法を巧みに駆使しながら、自社利益の追求に邁進するズルい存在」であり、吉川醸造は「『あふり』にゆかりのある地域の代表」と位置付けることに成功しているのだ。