70名以上の死者をだした“クマ川”も

谷川彰英『全国水害地名をゆく』(インターナショナル新書)

球磨川の「球磨」は“クマ”の単なる当て字と考えてよい。昔、熊本市から人吉市まで車で回ったことがある。どこまでも深い山の中を走るのみで、この先に人家があるのか不安に思うほどの山中だったが、そのうちポッカリと人吉盆地に出た。その時感じたのは、球磨郡の「球磨」は九州山系の「隈」、すなわち「入り込んだ奥まった所」に由来するのではないかということだった。

千曲川、阿武隈川、球磨川に共通するのは“クマ”すなわち「奥まった山間部をくねくね曲がって流れる」といった地形である。千曲川は佐久平や善光寺平など平野部を流れる印象があるが、小諸城址から見る千曲川のように随所に“クマ”は見受けられる。

“クマ”は「曲」「隈」「球磨」以外に容易に「熊」に転訛する。奈良県の十津川村から和歌山県新宮市に流れる熊野川も同じで、「クマ川」の典型と考えていい。2011(平成23)年の台風12号では死者72名、行方不明16名、床上浸水2162戸、床下浸水1160戸の被害をもたらしている。

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