8月中旬にドル暴落の可能性も

そして7月17日にケリー米大統領特使が訪中したわけです。1カ月の間に4人のキーマンが訪中しているわけですから、何かあるとしか考えられません。これは私の妄想ですが、8月にロシア、中国、産油国の間で何らかの合意がなされるとの噂があります。

現在は基軸通貨がドルなので貿易の決済は、基本的にドルで行われています。その中で「原油の決済を人民元にしよう」との話が進んでいるようです。一方で、金を大量に保有しているロシアは、金本位制を導入しようとしています。

これらが現実になれば、大変な影響を及ぼします。ニクソンショックどころではありません。ニクソンショックは、1971年に米国のニクソン大統領が金とドルの交換停止を発表し、世界経済の枠組みが大きく変化した出来事です。これに匹敵するようなことが8月の半ばに出てくる可能性があります。

この時に何が起こるか、ドル暴落です。ドルの覇権が終わるわけですから、ドルは大きく売られるでしょう。それだけではありません。基軸通貨の地位が揺らげば世界同時ショックが起きて、世界同時株安がやってくるかもしれません。そして、米国から日本へ資金がシフトする可能性が十分にあるでしょう。

そう考えると、この8月はリスク資産のウエートを下げておいたほうがよいかもしれません。いずれにしても8月は夏枯れといわれ、投資で利益を得るのは難しい時期ですから、あえてリスクをとらず静観するのがいいと思います。

TSMCの4年ぶり減収減益はチャンスになるか

7月21日の日本経済新聞には「TSMC、4年ぶり減収減益」との記事が掲載されました。半導体世界大手のTSMC(台湾積体電路製造)の2023年4~6月期の決算が減収減益になったというのです。

四半期ベースでの減収減益は19年1~3月期以来、約4年ぶりのことですが、これは4年ぶりにチャンスが訪れたことを意味します。

企業の収益は売り上げと利益の組み合わせによって、①増収増益、②増収減益、③減収減益、④減収増益の4パターンを繰り返します。

<売上と利益の4つの組み合わせ>

増収増益
売上高も利益も増えている状態。収益に合わせて株価が上がるとされる。

増収減益
売上高は増えているが利益が減少している状態。株価は天井を突くとされる。

減収減益
売上高も利益も減少している状態。業績悪化の局面で株価は下落するとされる。

減収増益
売上高は減少しているが、利益が増加している状態。この局面は株価の大底圏とされる。

ここで注目すべきは、売上高の変化に先行して利益が変化することです。TSMCのように減収減益の状態は、売上高と利益の両方が減少していることを意味します。これが減収増益に移行すると、売上高が減少していても利益が増加している状態になります。コストの抑制などによって、売上高が減っても利益は残りやすくなっている段階です。

つまり、減収減益の状態でも、売上高の減少よりも早いペースでコスト削減に取り組めば利益を出せる体質となり、売上高が少し戻れば利益が出るようになります。その結果、新たな商品やサービスなど、次なる手を素早く打てるようになって、株価の上昇も期待できます。

このような過程を経て増収増益に向かいつつある企業を狙うのが投資の王道です。その意味でTSMCは注目すべき企業といえます。