真実ではなく本質を見抜いて投資に生かす
私が塾長を務める複眼経済塾では、「物事の本質をつかむことが重要」だと教えています。たとえば、国のトップ同士が会談した場合、その内容は真実です。それを直接知ることができませんし、当事者以外がそこに首をつっこむべきではないと思っています。真実を知ろうとするのではなく、本質を求めるべきでしょう。
その手段がニュースの活用です。いま流れてきている、ニュースから「これはどういうことだろう」と想像を巡らします。表に出ているニュースはごく一部ですから、想像力を発揮して、本質を見極めるのです。
いま見えているデータから、世の中がどうなっているか、仕組みを理解して、人生の判断あるいは投資判断に活用することが大事です。
これはプロも実践している方法です。たとえば、米国のCIA(中央情報局)は「98%の情報を公開情報から取得している」といわれています。新聞記事も丹念に集めて分析し、重要な事実をつかむ。地道な情報収集をしているのです。公開情報から本質を見抜く方法を学ぶことが重要です。
また、過去に私たちが本質だと思っていたことが、いまも正しいかどうかわかりません。日々のニュースをチェックしながら、情報をアップデートしていく必要があります。この記事では、実際に新聞に掲載された記事から何を読み解き、投資にどう生かせばよいかを紹介していきます。
「円安になると企業業績が上向く」は間違い
このところ、為替の変動が激しくなっています。そのときに、「円高になると株が売られ、円安になると買われる」とのニュースを目にします。確かに円安になると外国人投資家が日本株を買い増しすることがあります。
ただそれは、「今日円安になったから、明日買う」といった短期的なものではありません。それ以前に外国人投資家は運用資産のアセットアロケーションを決めています。たとえば、「日本株には運用資産の5%を配分にする」と決めるのです。
彼らはドル建てで考えていますから、円安になると日本株の配分が5%から4%に下がることがあります。そこで、5%に戻すために日本株を買い増すのです。
あるいは、「円安になると企業の業績が向上するから株価が上昇する」と解説する人もいます。これも正しくありません。たとえばトヨタ自動車(7203)やソニーグループ(6758)が短期的な為替動向で業績が影響を受けるような経営をしているわけがありません。
つまり、投資において短期的な為替変動はノイズであって、右往左往する必要はないのです。