「パナソニックショック」の衝撃

「英語」「IT」「財務」はグローバル時代の読み書きそろばんのような三種の神器である。残念ながら、日本の若者はその読み書きそろばんにおいて、他のアジアの若者に比べて著しく劣ってしまった。それが今、韓国などとの人材格差につながっているのだ。今後、日本がグローバル企業として、世界標準仕様のオペレーションを進めていくのであれば、日本人だけで会社を運営するのはますます困難になっていく。英語の社内公用語化どころではない。日本のサラリーマンそのものがバイパス(迂回)される時代がやってくることは十分に想定できる。

その意味で、“楽ユニショック”よりも“パナソニックショック”のほうがはるかに衝撃は大きい。

大手国内メーカーの新卒採用者に占める海外採用の比率が、8割弱の時代に突入。
(ロイター/AFLO=写真)

パナソニックは2011年春における採用人数を、前年比1割増の1390人予定している。そのうち海外採用は47%増と過去最多の1100人で、逆に国内採用はほぼ半減して290人。新卒採用に占める海外採用の比率がついに8割弱に達するという。ブルーカラーの話ではない。ホワイトカラーの話である。同社は04年から、採用を国内と海外に分けて行っていたが、海外の採用は6割だった。それを、来年度から8割に高めるのだ。パナソニックは、連結売上高に占める海外比率を現在の47%から12年度には55%に引き上げる方針を明らかにしている。アジアだけでも洗濯機や冷蔵庫など、白物家電が普及していきそうな新興国はたくさんある。現在のパナソニックの商品構成を考えれば、海外売り上げ比率が8割になっても不思議ではない。(※雑誌掲載当時)

つまり、パナソニックの将来の世界シェア分布から見れば、海外採用比率8割というのは全く正しい数字なのである。企業は事業戦略先行で10年後、20年後を見越して「育てるのに時間のかかる」人を採らなければならない。これをやり抜いた企業が勝ち残るのだ。

グローバル企業であれば、全世界から優秀な人材を集めて最適なフォーメーションを組むのは当然のこと。グローバルステージを目指す日本企業なら、国内採用を抑制して、海外採用を増やすのはこれまた当然の成り行きだ。

パナソニックの件は大きな話題になったが、すでにひっそりと動き出している企業はいくつもあるし、今後、日本人の採用を手控える企業は少なくないだろう。このあたりの危機感というのは、メディアを通じてまだ十分には伝わっていない。日本人は人材として粗悪品や不良在庫になりつつある。新卒の就職率が、60%でも高いと言われる時代がやってくる――。耳を塞ぎたくなるかもしれないが、それが迫りくる現実なのだ。

それだけではない。運よく新卒で採用されたとしても、海外で採用された1100人もの同期との競争が待っている。その競争相手は、英語はもちろん、下手をすれば日本語、母国語の3カ国語を操り、ITや財務にも明るくてフットワークも軽いのだから強烈だ。

ITは少々こなすが英語や財務は苦手、できることなら海外勤務はしたくないと75%が思っているような内向き志向の日本人では勝てる要素は一つもない。