母親に疎まれ「顔をどうにかしなくては」と焦る18歳

次に、顔が気になって仕方ない。とくに目の形と顔の輪郭が気になる。鏡など映るものなら何でも見てしまって、見つづけずにはいられない衝動にかられてしまうと来院したエミさん(18歳)の例を振り返ります。「まずは顔を治さなければ何もできない」という考えで頭がいっぱいで、どうしたらいいかわからないと泣きながらやってきました。

写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

一家の大黒柱として働く看護師の母と、定職に就かない父という両親のもとに生まれたエミさんは、生まれてからずっと母親の実家で暮らしてきました。

しかし母親はなぜかエミさんを疎ましく感じ、祖父母からも「なつかない子だ」と不満を言われて育ちました。

まもなくエミさんに弟が生まれると、母は弟を溺愛するようになりました。

母親にはエミさんを愛したいという気持ちはあるものの、どうしてもすぐに喧嘩になってしまうというのです。

小学6年生のときに、SNS上で友だちから顔の悪口を言われたことがきっかけで保健室登校になったエミさんは、中学校に入ってからは登校できなくなり、ずっと不登校状態がつづいています。

中学で二重まぶたの切開法、高校生で鼻を美容整形した

「顔をどうにかしなくては」という思いが消えず、中学2年生のとき、地元のチェーンの美容外科で一重まぶたを二重にする埋没法(プチ整形)を受けますが、すぐに戻ってしまったので、別の美容外科で切開法を受けました。

高校3年生になってからは鼻尖形成、鼻孔縮小術を受けて鼻を小さくしてみたものの、学校には行けずにいます。

自分を肯定する気持ちがまったく持てないので精神科を受診し、投薬も受けましたが、効果は見られませんでした。エミさんの顔へのこだわりはますます強まり、今度は目尻と下眼瞼を下げる手術とエラ輪郭の手術を切望しています。

エミさんの顔への強いこだわりの背景には、あきらかに愛着の深い傷が見てとれました。無条件に愛されたことがないがために自分を愛せない、強い愛着障害に起因する身体醜形症です。

けれども当時は私が遠隔診療をおこなっておらず、本人が地元の大学病院での認知行動療法を希望したので私の治療にはいたらず、歯がゆい思いの残る症例となりました。