解約には今も6回のクリックが必要
ところが、実際にキャンセルするとなると、顧客を引き留める何重もの手段が講じられている。サイトからキャンセル手続きへ進むと、場合によってはまずは30日間の無料期間が追加で提示される。
見方によっては、プライム特典を十分に活用できなかった顧客への救済手段とも捉えられよう。しかし、指定期間内に再び同じページに戻ってキャンセルしなければ、有料会員へと自動的に移行する。有料期間への移行前に明確にキャンセルの意思を示した顧客に対し、再びキャンセル忘れの機会を設けている印象を帯びる。
こうした無料期間延長のオファーは一部顧客にのみ提示されるが、そうでない最短ルートで解約に至るケースでさえ、キャンセルの手順は複雑だ。最も少ないケースでも、1回のマウスオーバー(特定のメニュー項目にマウスポインタを当てること)と6回のクリックを必要とする。
その過程で表示される中間ページには、黄色地に黒文字の目立つボタンが複数配置されている。多くは、クリックしてしまうと解約以外の選択肢へ誘われ、解約手続きが中断されるものだ。顧客がキャンセルの意思表示をすることを不当に妨げているとするFTCの主張にもうなずける。
正しいボタンを選ばないとページにたどり着けない
具体的には、キャンセル手続きの最初の画面へ進む前に、あたかも最終確認であるかのように2回のクリックを必要とする。遷移先の画面では、これまでいくらの配送料が無料になったかを強調し、プライムの利点を再確認させる。その他、プライム特典に含まれるサービスを確認できるリンクも添えられているが、興味を持ってこれをクリックすると、キャンセル手続きのフローから離脱する。
元のページに戻ると、その末尾には、2つのボタンが並列に表示されている。キャンセル画面のはずだが、第1の選択肢は「特典と会員資格を継続」となっている。すでにキャンセル手続きへと進んでいる顧客に対し、継続を第1の選択肢として示すことは不親切だ。
ここで正しいボタンを選択したとしても、別画面へと遷移し、より安価な年間プランへの移行案が提示される。さきほどは第2の選択肢をクリックすることでキャンセル手続きを進められたが、今度はボタン順が逆に設置されている。第2のボタンをクリックすると「会員資格を継続する」を選択したことになり、キャンセルの手続きは中止される。
最終ページでは再び、最も目に付きやすい色つきの選択項目として、「会員資格を継続する」を勧められる。キャンセル後は配送料が有料化され、限定セールへの参加資格がなくなるなどデメリットを強調する文言が並び、そのうえで「一時停止」のオプションが用意されている。
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だが、このオプションでは会費の請求が一時停止されるものの、プライム会員を完全に終了することはできない。ただしい手順は、画面の最も下に設置された「特典と会員資格を終了」ボタンを選ぶことだ。手軽に試用できる加入時と比べ、引き留め工作が張り巡らされた退会の難易度は高い。