特典を充実させ、値上げを繰り返してきた

Amazonプライムは無料配送を中核とした、会員制のサブスクリプション・サービスだ。月額14.99ドル(約2100円)、あるいは年額139ドル(約1万9700円)を支払うことで、配送料の免除や会員限定セールへの参加資格の付与など、ショッピング面でのさまざまなメリットが用意されている。アメリカでは傘下の食料品店・ホールフーズでの買い物をすると、割引を受けることも可能だ。

これに加え、無料のメディア配信サービスが付帯する。映画やドラマをストリーミング配信する「Prime Video(プライム・ビデオ)」、雑誌から実用書までを電子書籍で提供する「Prime Reading(プライム・リーディング)」、1億曲をデジタル配信する「Amazon Music Prime(アマゾン・ミュージック・プライム)」などの各種コンテンツを、追加料金なしで利用可能だ。

2005年には年間79ドル(現在のレートで約1万1200円)だったが、サービス拡充に伴い値上げを繰り返し、現在の価格は当時より75%増しとなっている。ちなみに日本でのプライム会員の価格は、月払いの「月間プラン」で500円、「年間プラン」では4900円(いずれも税込み)となり、物価の差を差し引いても割安だ。

FTC「意図せず加入させ、消費者を欺いた」

多様なサービスを一括提供するAmazonプライムだが、その入会と退会の手法が問題となった。FTCは訴状を通じ、「被告・Amazon.com, Inc.(以下“Amazon”)は長年にわたり、数百万人の消費者を故意に欺き、同社のAmazonプライム・サービスに意図せず加入させてきた(“同意なき入会者”あるいは“同意なき入会行為”)」と指摘する。

FTCの訴状より

訴状は入会プロセスの具体例を図示し、「ミスリードする言い回しや(ユーザーを誤解させて)操るようなデザイン」などを意図的に用い、顧客の同意を得ないままプライムに加入させたと指摘している。

例としてスマホ端末からの注文時には、小さな画面を縦に2分割し、左側に「プライム加入なし」、右側に「プライム加入特典」の選択肢を表示。ところが、この2つの欄の下半分を覆い隠すようにして、「無料の2日後配送をプライムで」のボタン付きの画面を重ねていた。

本来の左右2つの選択肢を選ぶためのボタンは、下に半分隠れた状態の画面をスクロールしなければ表示されない状態だった。また、左側の「プライム加入なし」を選択したいユーザーが、その上からかぶさっている「無料の2日後配送をプライムで」のボタンを誤ってクリックしやすい設計にもなっていた。

別の画面の上部には、「30日間のプライム資格を無料でオファーします」と大々的に表示され、「無料で」を大文字で強調。その下に小さく、無料体験期間の終了後は月あたり14.99ドルが請求される旨が添えられていた。FTCはまた、キャンセルしない限り毎月料金が繰り返し請求される旨が不明確であった点も問題視している。

スマホ端末以外では、同社の映像出力端末のFire TV StickやFire TVを通じてプライムへの加入ができるものの、同端末だけでは解約できない仕様となっていた。