浴室や台所の黒カビは素手で掃除しない

青カビの中には「マイコトキシン」というカビ毒を作る種類があり、穀類等の農産物や食品に付着、増殖して作り出される毒素の総称です。通常の調理温度によって無毒化されないため、人や動物の健康危害を防ぐには、基準値を超える汚染物を排除するしかありません。「マイコトキシン」は毒性が強く、肝臓や腎臓等に障害を与えます。造血機能障害や免疫機能不全などを引き起こすもの、肝臓がんや腎臓がんの原因となるものもあります。このため、毒性の強いカビ毒に汚染された食品は、食品衛生法で厳しく規制されています。

浴室や台所などにみられる黒いカビにも注意が必要です。排水溝の蓋などに付着しているドロドロした黒カビは、人間に感染する可能性があります。「エクソフィアラ」という黒カビは、傷口から侵入すると炎症を起こします。皮膚の膿瘍のうようや潰瘍を引き起こすだけでなく、皮膚の深いところまで入ると血流に乗り、肝臓や脳に膿瘍を形成します。脳を侵されると死に至るケースもあるといわれています。浴室だけではなく、洗濯機や加湿器の内部にも発生しやすく、こういった場所を掃除される際は必ずゴム手袋をつけるようにしましょう。

写真=iStock.com/olaser
※写真はイメージです

カビがアルツハイマー病の原因になる可能性

最近では、カビとアルツハイマー病との関連についても注目されています。

ディアナ・ピサルース氏らの研究によると、アルツハイマー病患者の脳組織から真菌細胞と菌糸が発見されました。このことからカビがアルツハイマー病の原因の一つである可能性が示唆されています。

アルツハイマー病患者と、症状のない方で比較調査をしたところ、症状のない方には外前頭皮質、小脳半球、海馬、脈絡叢などのさまざまな脳領域に真菌物質は存在しませんでした。一方、10人のアルツハイマー病患者の脳切片からはもれなく真菌感染症が確認されたそうです。また、真菌感染は血管でも観察されており、血管の真菌感染は血管性認知症(脳に血液を供給する血管が損傷され、認知症を引き起こす原因となる病気)患者との共通点を説明している可能性もあります。

アルツハイマー病が真菌性疾患である可能性、または真菌感染が危険因子である可能性は、アルツハイマー病患者に対する効果的な治療法に新たな展望をもたらすことでしょう。〔Different Brain Regions are Infected with Fungi in Alzheimer’s Disease  Diana Pisa, Ruth Alonso, Alberto Rábano, Izaskun Rodal&Luis Carrasco Scientific Reports volume 5, Article number: 15015(2015)〕

このように、生活の至るところに存在するカビは、人体へ大きな影響を及ぼします。夏バテで体力が落ちている時は、ちょっとしたきっかけでも体調を崩すことがあります。面倒ではありますが、健康のためにもしっかりとカビ対策を行い、清潔で快適な住空間を保つことを心がけましょう。

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