「安心安全」を公務員に求める無理

先に挙げた東京財団政策研究所の調査(*9)や、日本維新の会の政策から見えるのは、「公務員の人件費」を少なくすれば良い、減らさなければならない、と考える人たちの多さである。

であれば、「小さな政府」、つまり、国や地方自治体がどんどんサービスを提供しなくなる方向を望んでいるのだろうか。

そうではないのだろう。

冒頭でみた、さいたま市消防局のツイートに明らかなとおり、公務員に清廉潔白さ、というか、我慢を求める傾向は強まりこそすれ、弱まってはいない。正確にいえば、日本社会が公務員に求める水準は高い。

典型的なのが、「マイナカード」をめぐる河野太郎デジタル担当大臣の発言だろう。

写真=時事通信フォト
マイナンバー情報総点検に関する関係府省担当課室長説明会であいさつする河野太郎デジタル相(中央)=2023年6月30日午後、東京都千代田区

「安心安全に利用できる活用サービスをさらに作り出していくことができると思っている」。コンビニエンスストアでのカード活用に向けて協定を結んだ際の、河野大臣の発言である(*10)

この「安心安全」は、日本では、しばしばセットで使われるものの、マイナカードのような行政サービス、つまり、公務員に求めるのは無理がある。

他言語で日本語の「安心」に対応する言葉

「安心安全」は、日本語以外、例えば英語では、どう表現されるのだろうか。

「safe and secure」が、まず挙げられるだろう。

Secureの語源は、se(ない、欠けた)と、cura(注意、配慮)である。気にしなくても良い状態=放っておいても大丈夫、というところから、「安全」を意味する。

クレジットカードを使うときの「3Dセキュア(本人認証サービス)」のようなかたちで、secure(セキュア)は、あくまでも制度の上で「安全」が保たれている状態を指す。

これに対してSafeは、古期フランス語のsauf(安全な)から来ており、現代でもフランス語では、sain et sauf(健全で安全)=「無事に」を意味する成句として、ふだんの会話で使われる。

他の言語でも、日本語の「安心」と、ぴったり当てはまる言葉を探すのは難しい。