「業績がよいから働きがいもある」は本当か

次のような意見もよくいただきます。

「もともと業績がいいから、働きがいも高まるのではないか」。

確かにそのように影響するケースもあるでしょう。そこで、単年度での比較ではなく、時系列のあるデータをご紹介します。

図表5は、2022年版「働きがいのある会社」ランキングベスト100選出企業および働きがい認定企業(※)のポートフォリオへ、17年3月末に等金額を株式投資したとした場合の5年後(22年3月末)の投資リターンをシミュレーションしたものです。

ベスト100企業のポートフォリオのリターンは153.1%(年率換算前)、認定企業のポートフォリオのリターンは130.4%(同)でした。同時期のTOPIXと日経平均のリターンはそれぞれ28.7%と47.1%(同)です。働きがいと業績の明確な因果関係を示せるものではありませんが、働きがいの高い企業は中長期で業績を上げ続けることがわかります。

※GPTW Japanは、働きがいに関する調査の結果が一定水準を超えた企業を「働きがい認定企業」、さらにその上位企業を「働きがいのある会社」ランキングとして発表しています。

「非財務的成長」が「財務的成長」を生む

調査結果から働きがいと業績の相関関係を示しました。会社・職場が、働きがいを高める努力を重ねることによって、非財務的成長が起こります。その非財務的成長と財務的成長には関連性が高いということは、注目に値する結果ではないでしょうか。ただし、因果関係が証明されたものではないため、注意が必要です。

荒川陽子『働きたくなる職場のつくり方』(かんき出版)

「非財務的成長」とは、財務諸表などに表現されるお金や数字等で可視化はできない成長のことです。リーダーシップやダイバーシティ、企業文化などが成熟し、生産性やイノベーション、人材の成長など、会社の総合力が強化される状態を指します。結果として、財務的成長に好影響を与えます。

このように、働きがいのある職場は、マネジメントとメンバーの間に信頼関係があり、チャレンジングで前向きな気概が生まれやすくなります。そのような企業風土であると、数々のイノベーション(ここでは、革新的なアイデアだけでなく、既存の業務改善も含みます)を生み出します。

その結果、顧客に提供する価値が磨かれ、財務的成長に繋がるということでしょう。

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